間話 メイドとラジオの真似事をします。第四回
「布良先輩」
「んー? どうしたのかな? 莉々ちゃん」
「なんでこの組み合わせ」
「そりゃー、私のルートはこの間完結したからね。出るのは必然じゃない?」
「じゃぁ、莉々は?」
「ここまでの流れで、片方は二回連続出演って感じだったから、それを踏まえて莉々ちゃん」
「でもメイドいないよね。コスプレしている人はいても。タイトル詐欺じゃん」
「ほら、そこを見て。相馬くんと陽菜ちゃん居るよ」
「……何で莉々が進行なのだろう。メイド服のコスプレしている布良先輩がやれば良いのに」
「それは……なんでだろうね。代わろうか?」
「良いです。それでは、進行を君島莉々。ゲストとして布良夏樹先輩をお迎えして、本日のラジオコーナーを進めさせていただきます。まずは質問コーナーから」
意外としっかりこなす君島さんでした。
「終わらせるな日暮相馬。えぇ、では。33Rさんからですね。この人前回もいたな。要約すると。相馬君のお母さんの事は語られるのか、記憶失くすくらいなら相当壮絶なものがあるのでは、乃安ちゃんがお付き合い申し込むシーンの乃安ちゃん目線はあるのか。後は派出所ということは本部みたいなものがあるのかってところでしょうか」
「あ、あはは。随分適当にざっくりとまとめたねぇ」
「おっ、乃安ちゃんっぽい笑い方です。布良先輩」
「これだけで乃安ちゃんまで繋げられる莉々ちゃんが凄いよ。それよりも、ほら、答えなきゃ」
「はい。それじゃ。えーっと、日暮相馬の母親に関しては、どうなんすか?」
「んー、壮絶かどうかは、見る人の目線に変わると思うよ。相馬くんのお母さんはどこまでもお母さんであくまでもお母さん。まぁ、相馬くんにとっては壮絶なものだろうね」
「答えになってないですよ、布良先輩」
「なってないね。これ、作者さんからこんな感じで答えてねーってしか言われてないもん」
「ふーん。ちなみに乃安ちゃん目線が望まれるあの妙に人気があるであろうあのシーンは、乃安ちゃんのこれから次第。正直出るかわかりません」
「あのシーン。私も好き」
「作者の思い付きで書き始めて結構悩んで書いたからねぇ。日暮相馬のあの間抜けな反応よ」
「まぁ、仕方ないんじゃない? 完全な不意打ちだもん」
「乃安ちゃんも小悪魔ですねぇ」
「だねぇ。それで、次の答えは」
「派出所ということは本部なんてものがあるのかどうか。もしや秋葉原に? なわけ。あのメイド長とか呼ばれている人の会社を本部とでも呼べば良いのかな、これ」
「そうかもね。メイド事業はあの人がやっていることの一つらしいから。他に何やっているんだろう」
夏樹が陽菜の方をちらりと見るが、陽菜は何も言わない。そうだぞ陽菜。語るのは彼女たちで、ここにいる僕らは一言も発してはいけないのだ。だがな陽菜、それを良い事に頭を拳で挟んでぐりぐりするのやめてくれ。
「というか、莉々達会ったこと無いけど、メイド長って何者。金何処から来ているの」
「うーん。化け物じゃない?」
「違法なことに手を出していたりして……」
夏樹がまた、陽菜の方をちらりと見るが素知らぬ顔。陽菜によるぐりぐり攻撃も止まる気配は無かった。
「さて、それじゃあ、布良先輩の事について深めていこうか。最初、朝野先輩と対極のキャラを出そうと出てきたのが布良先輩らしいけど」
「へぇ」
「自分の事なのに随分と投げやりですね」
「まぁねぇ。自分の生まれた理由とかどうでも良いかな」
「それはわかります」
「でもそっか。陽菜ちゃんと仲良しさんになれたのはそれがあるのか。対極の方が仲良くできるもんね」
「同族嫌悪するタイプですか?」
「んー。そうでもない。そこまで人を嫌うわけでも無いし」
「なるほど。ちなみに莉々は莉々がもう一人いたら確実に殺します。絶対殺します。気持ち悪いです」
「過激だねぇ」
「布良先輩とは合わない主義ですよね。これ」
「あはは~。でも私と莉々ちゃんもう仲良しさんで良いよね」
「でも莉々は布良先輩苦手ですよ」
「おおっ、これはまた唐突に」
「むしろ、陽菜先輩の方が、多分もっと違う出会い方していたら仲良くできたと思います」
「じゃあ、陽菜ちゃんを介して私と仲良しさんだ」
「そういうのが苦手というか。こう、何というのか。感情をわりと直球で投げて来るのに肝心なものを隠している感じが苦手なんです」
「そうかそうか。恥ずかしがり屋なのか」
「どうしてそんな解釈になるのですか。うぅ、調子が出ない」
「相馬くんの時みたいな辛辣さが無いねぇ。乃安ちゃんと一緒にいる時のぐうたらさも。今はただ不機嫌な後輩ちゃんだねぇ」
「莉々がご機嫌な日ってどんな日だろう」
「どんな日だろうねぇ。今度一緒に遊ぶ?」
「無理です」
そう言ってギロリとこちらをにらんでくる。どうにかしろと目で訴えて来るが、残念だ。どうにもできない。
「ありゃ、残念。そっかー、私が苦手かー」
「抜けているように見せて頭も良いし」
「勉強ができるだけだよ」
「莉々、テスト前に放課後授業しているの見ましたけど、あれはしっかり理解できなきゃ無理ですよ」
「勉強しているからねー」
君島さんの表情は今にも噛み付きそうだ。
「まぁまぁ、莉々ちゃん。落ち着いて」
「そのデカい乳揉みしだいて良いなら落ち着きます」
「それは駄目です」
「日暮相馬以外には辛辣にしないつもりでしたけど、辛辣にして良いですか?」
「んー、それはそれで良いかも」
「その目をやめてください。出来ないじゃないですか。あー、調子が狂う」
君島さんがたじたじだ、珍しい。
「大人しく布良先輩についてまとめていきます。はい、成績は優秀な学級委員長。けれど抜けているところがあって、単純な凡ミスがそこそこある。そこさえフォローすれば基本的に上手くいく。ふーん。あとスキンシップには結構積極的。はい、布良先輩。莉々にを抱きしめるのは勘弁してください」
「えー。あー、お肉が少なくて羨ましいなぁ。すっぽり収まって丁度良いし」
「莉々が細いって言いたいのですね、喧嘩売ってます?」
「確かに細すぎるねぇ」
「ちっ。細すぎて育たないのですよ。セクハラですか? こちらからもしましょうか?」
「セクハラ撲滅。断固反対!」
「布良先輩が今やっているのは?」
「スキンシップ! 好意の表現」
「そうですか。知っていますか? 女性からのセクハラも成立するのですよ」
「うん、そうだね。あまり認知されていないけど」
「はい、本当、糞みたいな世の中ですよね。こういうものばかりあまり浸透しない」
「ん? 莉々ちゃん?」
「莉々がニートになりたいのは世の中が大荒れ模様の大海過ぎて船を出したくないから。海が平和になれば莉々も漕ぎ出します」
「莉々ちゃーん。落ち着いて、暴走しないで」
「莉々は働きません。社会の歯車にはなりません。莉々は誰かに養ってもらいます。すねかじりの引きこもりになります。自宅で稼げる仕事を探しています。世の中に出る気が無くなる情報ばかりで莉々はもう嫌で嫌でしょうがないのです」
「あー、これは駄目だ。えっ? 乃安ちゃんからメール? 莉々は今日徹夜明けなので気をつけてください? もしやこれ、徹夜明けのテンション!」
夏樹が慌てふためいている。君島さんの徹夜明けは確か……すごく饒舌になるだ。止まらない。本当に。
「そもそも、----としてーーーーー! 最初から弱いーーーーーーー、--を引こうーーーー、甘い! 実力でーーーーー誰にーーーーーーーーーーをーーー。そう言う人たちが勝ち取ったーーだけをーーーーーーー。むがーっ! 布良先輩、どうしてマイクを塞ぐのですか! 邪魔です!」
「お願い、作者さんが叩かれること言わないで。お願い。今日はおしまい。おーしーまーいー!」
陽菜のぐりぐりはまだ続いていた。