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諦めなければ、望みはある。現実とは違って。

「なぜ、魔王が存在するのか。なぜ、勇者が存在するのか。それは誰にもわからない」

 そんな重々しいナレーションとともに、広い草原が目の前に現れた。

「と、そんなことは置いといて。お前、今日からここにやってきた学生だろ?」

 突然、目の前に人懐っこい笑みを浮かべた青年が現れ、話しかけてくる。

「俺は殿町(とのまち) (だん)。よろしくな」

 にこやかに手を差し伸べてくる騨。俺はその手を取って握手を交わした。

 と、周りの風景が学校のそれに変わる。

「さあ、教室に行こうぜ」

 騨に引っ張られるように、俺は教室へと向かった。


「ご苦労だったな、殿町。お前は席に戻れ」

 教室に入った俺たちを待っていたのは、眼鏡をかけたきつそうな感じの女の人だった。何がきつそうかって? それは想像にお任せするよ。

「じゃあ、自己紹介しろ。転校生」

 空中に選択肢が二つ表示された。


【黒板に名前を書く】

【直接名乗りを上げる】


 まあ、迷う必要はないな。

 俺は黒板にチョークらしきもので、名前をーー書けなかった。

 チョークが黒板に触れた瞬間に激しい爆裂音が響き、俺は教室の隅まで吹き飛ばされていた。

「くそ! また魔王軍のテロ攻撃か!」

「皆さん! 落ち着いて! 早く非難してくだしゃい!」

「先生! キャラ変わってますから、落ち着いてください」

 皆が慌ただしく動きまわる中、目の前に文字が表示された。


【魔王軍のテロが起きてしまう。DEAD END】


 人の居なくなった教室に俺だけがいる。身動きもとることも出来ず、物語が進むわけでもなく。

 ああ、そうか。

「ログアウト」


 画面がブラックアウトして、俺の頭にヘルメットの感覚が戻ってくる。説明文に書いてあった通り、ログアウトと言わなければ出られない仕様になっているらしい。

 それにしても、

「嘘だろ!」

 こんな展開、理不尽すぎるじゃないか?

 と、まあまあ冷静になれ俺。超高難易度なんだこれくらいはあるだろう。魔王軍のテロくらい……

「いや、ないだろ!」

 って、愚痴っていても始まらないな。ギャルゲーマスターの俺に不可能はないのだから。

 俺は金庫から財布を取り出すと、金庫の上に百円玉をすべて並べた。その中から一枚を取り、投入口へと。

「さあ、こっからが本番だ」


 玉座のに腰を下ろして、ヘルメットを被る。卵が閉じ、視界が真っ暗に染まった。

「マスターシステム起動。プレイヤー様のプロフィールを入力してください」

 可愛らしい女性の声が聞こえる。って、ここからかよ!


 ※※※


「ご苦労だったな、殿町。お前は席に戻れ」

 さあ、眼鏡をかけたハンパない先生のところまで来たわけだが。何がハンパないかって? それは想像にお任せするよ。

「じゃあ、自己紹介しろ。転校生」

 空中に選択肢が二つ表示された。


【黒板に名前を書く】

【直接名乗りを上げる】


 俺は学習する生き物なのだ。

 俺は黒板に背を向けて、名乗りを上げた。

上杉(うえすぎ) 景虎(かげとら)です。よろしくお願いします」

 瞬間、激しい粉砕音が響き、俺は教室の隅まで吹き飛ばされていた。

「黒板に名前を書いてから名乗れ。そんなことも出来んのか?」

 先生がどこから持ってきたのかよくわからない金属バットを振り下ろす。そして、赤く染まった文字が表示された。


【自己紹介に失敗して百鬼(なきり)先生にシメられる。DEAD END】

「ログアウト」

 俺は反射的に呟いた。


 画面がブラックアウトして、俺の頭にヘルメットの感覚が戻ってくる。

「なんでだよ!」

 もやもやを発散するために、とりあえず叫んでみた。

 選択肢は二つだったのだ、二つともDEAD ENDっておかしいだろ? 超高難易度ってレベルじゃねえよ。クリアできねぇよ。

「いや、待て。もしかして……」

 一つの可能性を俺は思いついた。それを試してみよう。

(ギャルゲーマスター)をなめるなよ」


 ※※※


「ご苦労だったな、殿町。お前は席に戻れ」

 さあ、眼鏡をかけたヤバイ先生のところまで来たわけだが。何がヤバイかって? それは想像にお任せするよ。

「じゃあ、自己紹介しろ。転校生」

 空中に選択肢が二つ表示された。


【黒板に名前を書く】

【直接名乗りを上げる】


 だが、よく考えろ。この選択肢に絶対従わなければならない理由は、ない!

「先生。このチョーク、何か違和感があります」

「なんだと?」

 先生がチョークを奪って、じっくりと見る。

「これはっ……! 皆の者、離れろ!」

 生徒たちが一斉に距離を取り、最前線の生徒たちは大きな盾を構える。俺も慌てて、盾持ち生徒の後ろへと逃げ込んだ。

 そのことを確認すると、先生はチョークを黒板に投げつけた。

 激しい爆裂音が響きわたるとともに、熱い風が教室を吹き抜ける。

「また、魔王軍の攻撃か……」

 先生が煙の中からゆっくりと歩み出てくる。

「この教室に入れるのは、学校関係者だけだ! 魔王軍の……いや、裏切り者を探せ!」

 生徒たちが一斉に教室から飛び出した。そして、一人取り残された俺の前に、選択肢が浮かび上がった。


【ここからはスパイの捜索活動となります。行き先を声に出して選択してください】


【屋上】

【保健室】

【食堂・購買部】


「屋上だ」

 俺はすぐに行き先を決めた。上から順番にとかではなく、きちんと考えての結果だ。

【承りました】

 すると、目の前の景色が一瞬で変化する。遠く青い空がどこまでも続く……あれ?

「死んじゃった♪ だって、あんた裏切りものを探してんのに無防備すぎなのよ♪」

 足のほうから声をかけられて俺はそちらを向こうとしたのだが、体が全く動かない。というより、感覚が全くない。

「裏切り者役、よろしくね♪ って、もう聞こえてないか♪」

 と、視界に現れた少女は髪の毛を掴んで俺を立ち上がらせる。いや、違う。

 見渡せるようになった屋上に、首から上のない体が転がっていた。そして、俺には首から下の感覚がない。

「ああああぁぁぁぁぁ!」


【屋上で裏切り者として殺される。DEAD END】


 恋愛シミュレーションゲームで殺されるとかありかよ。

「っ! ログアウト」


 画面がブラックアウトして、俺の頭にヘルメットの感覚が戻ってくる。

 死体を見て気分の悪くなっていた俺は、大きく息を吐き、自分を落ち着かせる。落ち着いたら、ヘルメットを外して卵の外に。

「俺をなめるなよ」

 百円玉を一枚掴んで、投入口へ。

「覚悟しろ。裏切り者」


 ※※※


「ご苦労だったな、殿町。お前は席に戻れ」

 さあ、眼鏡をかけた圧倒的な先生のところまで来たわけだが。何が圧倒的かって? それは想像にお任せするよ。

「じゃあ、自己紹介しろ。転校生」

 空中に選択肢が二つ表示された。


【黒板に名前を書く】

【直接名乗りを上げる】


 ここでは選択肢に従わなければならない理由はない。つまり、

「先生。このチョーク、何か違和感があります」

「なんだと?」

 先生がチョークを奪って、じっくりと見る。

「これはっ……! 皆の者、離れろ!」

 生徒たちが一斉に距離を取り、最前線の生徒たちは大きな盾を構える。選択肢にないことでも同じように動けば同じように進むらしい。俺はそのことを確認すると、盾持ち生徒の後ろへ隠れた。

 生徒たちが身構え終わると、先生はチョークを黒板に投げつけた。

 激しい爆裂音が響きわたるとともに、熱い風が教室を吹き抜ける。

「また、魔王軍の攻撃か……」

 先生が煙の中からゆっくりと歩み出てくる。

「この教室に入れるのは、学校関係者だけだ! 魔王軍の……いや、裏切り者を探せ!」

 生徒たちが一斉に教室から飛び出した。そして、一人取り残された俺の前に、選択肢が浮かび上がった。


【ここからはスパイの捜索活動となります。行き先を声に出して選択してください】


【屋上】

【保健室】

【食堂・購買部】


「玄関だ」

 とりあえず、選択しない場所を言ってみた。

【選択肢よりお選びください】

 だが、場所が変わることはなかった。ということは、この中に正解があるということだ。考えろ、俺。

 まさか、購買部で……?

「ステータス」

 俺の声に合わせて薄暗くなった世界に、ステータス画面が表示される。そこには攻撃力と防御力、そして装備品という欄がある。

「購買部だ」

 一つの可能性を信じて俺は購買部を選択した。

【承りました】

 すると、目の前の景色が一瞬で変化する。

「いらっしゃい。なんか買っていくかい?」

 店の店主が景気よく話しかけてくる。と同時に選択肢が表示された。


【買う】

【買わない】


 ここは当然、

「買う」

 だな。


【武器を買う】

【防具を買う】


 答えると、間髪を入れずに次の選択肢が表示される。

 屋上に入ってすぐに殺されることを考えると、

「防具を買う」


【鉄仮面】

【軽鎧】

【足袋】

【手甲】


 四択か……前回は首を斬られたから、鉄仮面? それとも、手甲で受け止めるべきか。

 いや、これしかないな。

「全部だ」

【承りました。ここで装備していかれますか?】

「ああ」

 どうやらうまくいったらしい。

【次の行き先を声に出して選択してください】


【屋上】

【保健室】


 さっきの選択肢から購買部が減った選択肢が表示された。第一段階はクリアといったところだろうか。


「なら、ここからが本番だ」

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