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1988冬-9

裏手の駐車場に新たなグループの直管マフラーの爆音が続けざまに走りこんできた。

14、5台のバイクには拳王の髑髏のマークがペイントされていた。


みやこ食堂の駐車場での乱闘はどの族の間でも絶対禁止のルールだった。

ここで暴れて出入り禁止を申し渡されれば、冗談でなく喰いっぱぐれる死活問題になる。

だから、拳王のグループと鉢合わせしても、お互い睨みあうだけで手は出さないのが暗黙の了解だった。



だが、その夜は違った。

メットを脱いだ男の一人が俺たちに気づくと、わざと近づいてきて大声を投げつけてきた。

「なんだ、頭が片っぽになって紅蓮もしょぼくれてるらしいな」

嘲笑を浴びせてすれ違いざまに俺の肩を小突いたのは、元南野中の頭ション(鳥居)だった。

「カイがいなくちゃ、もうタイマン張っても助っ人してもらえねぇか。なぁ、ヒロ」

俺は返事もしなかったが、先へ行った仲間たちが駆け戻って来るのが見えた。


ションは執拗に俺に絡むのを止めない。

「カイが監物組に入ったのを知ってるか。親父の甲斐があいつを組長のところへ挨拶に連れて行ったんだってよぉ」

「なんでお前がそんなこと知ってる」

「監物組には俺の兄貴がいるんだよ。こうなりゃ、カイも俺の兄貴の下っ端だ。拳王で走らせてやってもいいぜ」

にたにたしているのは、裏の事情を仕入れて悦に入ってるからだ。


「カイが拳王なんかで走ってたまるか!」

クーガが喚き、バタたちも身構える。

「拳王の後ろ盾は監物なんだぜ。お前らがどうジタバタしようが、カイはもうこっち側の――」

ションは最後まで喋ることができなかった。俺がその口をめがけて拳を叩きつけてやったからだ。


あとはもうどちらも協定など捨て去って殴り合いの大喧嘩になった。

人数は拳王の方が多かったから、他にも俺にむかってきたやつがいたが、俺はションの胸ぐらを掴んで離さなかった。

もう二度とその腐った口を開かせないように、何度も殴り、腹を蹴った。

倒れたションの上に馬乗りになり、首を絞め、鼻も口も血まみれになるまで殴り続けた。



「もうやめろ、ヒロさん!これ以上やったら殺しちまう!」

そらやケータが俺をションから引き剥がそうと躍起になって叫んでいた。


遠くから近づいてくるパトカーのサイレンが聞こえた。

「逃げるんだよ!ヒロさん!」

バタが俺の頬を張り飛ばして、フェックスの元へと引き摺っていく。



カイが監物組に入った。俺の首藤組でなく――胸に渦巻く焦燥と苦痛。


俺にはもう紅蓮も見えなくなっていた。




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