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1988冬-4

諦めて大人しく軍門に降るか、無謀な強行突破で自爆するか、どちらにしても捕まればただでは済まない。

検問を逃れて逆走して戻ろうとする奴もいるが、スカイハイウェイ側からも怒涛のように押し寄せてくる警察が待ち構える。


「袋のネズミだ・・・・」

「俺たちの税金で喰ってるくせにヒデェことするな」

「官憲の横暴だ」


遅れたことが幸いした。逆走してくる車と下ろうとする車が衝突し合って前線はパニック状態に陥っていた。

強行突破しても紅蓮の全員が無事かどうかは無謀な賭けだ。


「ヒロ――」

マリンさんが走り寄ってきた。

「有料道路ができる前の、昔の道路があるはずだ。さっき通ってきた途中に入り口らしい柵があった。

昔、親父たちと通ったことがある。放置されてるだろうから、狭い道だしもう通れるかわからないが」

迷う暇はなかった。

「じきに明るくなる。そっちを行こう」 



一条の眩い光がさして周囲の山肌を金色に染めた。

日の出だ。

海に上る初日の出を見ることなく、俺たちの暴走は終わりを迎えようとしていた。

やけくそになって打ち上げられるロケット花火と弾ける爆竹。諦めて路上に立ちつくす奴らのホーンとコールが悲鳴のように鳴り響いていた。

警察の地鳴りのようなサイレン音がそれを押し包むように迫ってくる。




少し戻ったところで、道路脇に雑草の絡んだ錆びた柵に塞がれた跡が見えた。鎖が掛けてあったが押し倒してそこに飛び込む。

うろ覚えの記憶のあるマリンさんを道案内に、紅蓮の先頭にはカイを立たせ、みんなを先に行かせてから、俺がケツについた。


一車線幅の舗装道路だったが、両側から草木が生い茂り、路面はひび割れて波打ち、朽ちた倒木が塞ぐ。明るくなっていなければ、とても通れる道ではなかった。

背後からエンジン音が響いてきた。サイレンは鳴らないから、白バイではないはずだ。

俺たちが脇道に入ったのを見て追ってきた奴がいたのかもしれない。


音に気づいたバタが心配そうに振り返ったが、先に行けと合図を送り木刀を握りしめて倒木の陰に身を顰めた。

5台ほどのバイクが後を追って来ていた。黒い革のライダージャケットの背に白い文字、青いメット。


ナイト・リッパーの連中だった。

俺に気づいて先頭がすぐにメットを脱いだ。岩城が顔面の半分を血に染めて、俺に笑いかけた。

「紅蓮がこっちへ入るのが見えたから、運を天に任せて追いかけてきたが、ひでぇ道だな」


「人のケツを追いかけてきたくせに文句を言うな」

いつ来たのか、徒歩で戻ってきたカイが俺の傍らに立って岩城を睨みつけた。

「みんなは――」

「この先でスカイハイウェイの近くに出るらしい。パトカーや白バイがサイレンを鳴らして走り回ってるのが聞こえるから、しばらくここらで潜んでようということになった」


言われてみると、サイレンの音がかなり近くで聞こえてくる。

こっちのやかましいエンジン音を聞かれるのもまずいから、しばらく休憩しながら隠れていた方がよさそうだ。


岩城たちも一緒に先へ進むと、紅蓮の仲間が道路上にひっくり返ったり、倒木にもたれかかったりして一息ついていた。

「これだけ距離があって樹が生い茂ってるからまず見つからないと思うけど、山火事にならないようにタバコには気をつけろよ」

普段おとなしいマリンさんがこういう時は一番頼りになる。さすがにそらの兄貴だけのことはあった。


ケータはナンバープレートをまだ抱きしめて、グスグスと鼻を鳴らしていた。

「なんだよ、おまえ。女はしょっちゅう捨ててけろりとしてるくせに、バイク失くして泣くのかよ」

バタにからかわれても、めそめそしたままだ。


ダブルは、ナイト・リッパーのライダージャケットをしげしげと眺めて、今にも追いはぎになりかねない顔つきでいる。


「今年のマッポのやり方はひでぇよな。いったい何人動員してんだよ。税金の無駄使いだって投書してやろうぜ」

「いたいけな青少年虐めて何が面白いんだか」

先輩たちは昨年と比べて今年の警備の厳重さに泡を吹く勢いで文句を言い合っている。


ヘタをしたら検問解除まで、2、3時間このまま待たされるかもしれない。

一時の興奮が収まってくると、早朝の山の中は極寒でひたすら寒い。

「寒いよ、兄ちゃん・・・」 珍しくそらが弱音を吐いて、マリンさんに甘えている。


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