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1987春-3

翌日から、俺の高校生活が本格的に始まった。


原チャリを【ジャバ】の駐車場に置いて、【駅】から電車に乗り、中央駅まで出た。

仙堂学園は中央駅からバスで15分のところにある。


以前は路線バスが通っていたのだが、登校時間に乗り合わせた学生が毎日のように車内でケンカをおっぱじめ、ついにはバスの窓から相手を投げ落とす騒ぎにまでなって、

バス会社から仙堂学園の生徒は乗車拒否令が出された。


だから、朝晩各三本の学園専用バスに乗り損なったら、2キロの道を歩いて行くことになる。学園前の道は通学意欲を削ぐような急坂で、これも学校側の陰謀のように思えた。

バイクや車での通学はもちろん禁止だが、やっている奴は多いらしい。俺もいずれはそうするつもりだが、初日の今日はとりあえず様子見に大人しくバスに乗った。


入り口のステップの所に、竹刀を持ったガタイのいい教師が立って新一年生をねめつけていた。こいつが一番危なそうだった。

俺をじろりと見たが、とりあえず髪の毛のことは何も言われなかった。



かずまとは同じクラスではなかったが、教室には二人ほど知った顔がいた。向こうもほっとしたように俺に手を振る。一人は倉田中の奴だからいいが、もう一人は、「お前は南野中だろが」と、蹴ってやった。

市外どころか、県外の中学からも他に見放された奴らが入学してくる高校だ。

この学校に入るには親がそこそこの金を持っていることが唯一の条件だから、色んなレベルの不良(ワル)と本物の馬鹿が入り混じり、互いの力量を計って教室のあちこちで小競り合いが起きていた。


入学式に金髪で登場した俺は一年の間ではもうすっかり有名人で、危ない奴のレッテルを貼られて遠巻きに見張られている。



「――首藤」

廊下から呼ばれた。

「三年の先輩が呼んでるぞ。ついてこい」

廊下にいる二年生の声に、みんな一斉に俺とそいつを見比べる。

やれやれ、また中学の時と同じように一からの出直しかと溜息が出た。


「お前が首藤組の倅か――」

三年の棟に連れて行かれると、もう半分本物のヤクザとしか思えない先輩たちがぐるりと俺を取り巻いた。ちらちらと俺の金髪に視線を向けている。

「ショーヤさんから言われてるから特別に目こぼしはしてやるが、大人しくしてろよ」

脅しをかけておくように机を蹴りながら、髭面のおっさん顔が言った。


またショーヤが余計なことをと腹が立ったが、黙ってこのヘタレな先輩に頭を下げておいた。

そのうち実力で黙らせてやる気が満々だった。


教室に帰ってみると、三年に呼ばれたことで俺のクラスでのステータスはさらに上がっていた。



※ ※ ※



翌日、廊下を歩いている時に、すれ違った相手がパッと顔を背けた。

あれっ?と思ったが、小柄なそいつはそのまま足を速めて階段を駆け上がっていく。

「――遊佐!」

県立の進学校へ行ったと聞いていた久我中の遊佐に間違いなかった。


「待てよ!遊佐!」

追いついて肩を掴むと、強い力でふり払われた。

「学校で声をかけるな。馬鹿の仲間だと思われる」

「なんだ、お前。県立落ちたのか。それでここの特進に来たのかよ」

大声で言ってやった俺の口を塞ごうと、遊佐が真っ赤になって飛びかかってきた。


そのまま胸元を掴まれて、校舎裏まで引きずられていった。

人気のない場所まで来ると、遊佐は手を離して地面に座り込んだ。

俺がポケットから出したタバコを投げてやると、黙って咥えてジッポも要求した。


「試験の日に熱だしてよ・・・・俺ってほんとに、ついてないんだヮ。親父や兄貴にも健康管理がなってないってぼろくそに言われるし・・・」

「いいじゃん、授業料も入学金も無料(タダ)になって、県立行くより金がかからないんだから親だって内心喜んでるだろ」

「親戚には県立の進学校に入ったと言ってるらしい」

遊佐の家は地元の人間ではないから、その嘘がまかり通るのだろう。


「まあ勝負は大学でいいところに入ればいいんだろ。ここも特進はそれなりに力を入れてくれてるみたいだから。俺らの金でだけどな」

「畜生!絶対に東大に入ってやるぞ!」

「仙堂で東大に入った奴はまだいないらしい。入れば学校が遊佐の銅像建ててくれるだろうな」


遊佐は俺を睨んでタバコを踏み消すと、俺に指を突きつけて叫んだ。

「いいか、学校で俺に声をかけるなよ。馬鹿が移る」


「遊佐よぅ――」

ずんずんと去っていく、元久我中の頭に俺は声をかける。

「たまには紅蓮に走りに来いよ」

背を向けたまま足を止めずに、遊佐は俺に向かって中指を突き立てた。



その週末、遊佐が紅蓮の先頭を走った。

兄貴のホンダCBR400Fだという大型バイクに小柄な遊佐はしがみつく様に走っていた。




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