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シャングリ=ラ・ら・ら・・・  作者: 春海 玲
第三章 中三ー秋・冬
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1987冬-7

中学の卒業式、前日に体育教師の勝俣とすれ違った時、「機動隊呼んどけよ」と囁いておいたら、式が終わった途端に逃亡しやがったのか、姿が見つからなかった。


教員用の駐車場にはまだ勝俣のカローラがあったから、どこかへ隠れているのだろう。

金属バットを振りかぶったバタが、フロントウィンドウに叩きつけた。無数のヒビが走り、二発目で砕けた。俺もボンネットを叩きつけた。そらとけーたが屋根に上り、ドスンドスンとバウンドしている。ダブルもカラースプレーでどこもお構いなしに吹き付けている。


勝俣が直接俺たちを殴ったりしたわけじゃない。

だが、こいつはキキを修学旅行に行かせなかった――あんなに楽しみにしていたキキを。


カローラが悲鳴を上げるようにホーンが鳴りっぱなしになった。



南野中はその年も荒れて機動隊が出動したらしい。

卒業生は校舎のガラス窓を端から叩き割り、廊下を消火器の泡で埋め尽くし、教師を金属バットを持って追いかけ回した。

俺たちのしたことはそれに比べたら可愛いものだったが、機動隊が来なかったのは少し悔しいというのが正直な気持ちだった。



俺たちは金属バットを担いだまま意気揚々と校庭を横切り、校門を出た――義務教育という中学の囲いの外は、がらりと顔を変えた世間が待ち構えていることも知らずに。



※ ※ ※



3月は俺も忙しかった。

二代目南軍騎兵隊は、五つの中学の同盟が継続されることになり、ハガが頭に立った。強いだけでなく、人望もあるハガの代はきっと俺たちの代より大きくなるだろう。

トラはもう立派にハガを支えることができるし、その下のあさひも気合に腕力が追い付いてきたから、千種中は安泰だ。


ショーヤやタクロウさんらの抜けた紅蓮は、残る千種中先輩12人と俺の代8人、バタ、そら、ケータ、ダブル、工藤、山本、浦賀。

香西中はカイとクーガ達五人、総勢25名で二代目紅蓮として走り始めた。

夏休みの頃にはハガの代も加わりたいと言ってくるだろう。


俺の地元は縄張り意識が強いから、東京や神奈川のように統一された大人数の暴走族というのはできにくかった。

それぞれ卒業した中学が母体の小さな族をつくっていたから、当然、南野中出身者で構成された【世紀末覇者:拳王】が一番大きかった。

それに次ぐのが北部の秋庭中出身者の【ナイト・リッパー】だった。


騎兵隊で同盟した倉田中のかずまや外村中ののんちゃんもそれぞれの学区の小さな族で走っていたが、時々一緒についてきた。

久我中の遊佐とはそれきりになった。あいつは県立の結構な進学校を受けると言っていた。




南軍騎兵隊と紅蓮の交代に較べたら、些細なことだが、俺は仙堂学園に無事に合格した。

かずまも同じ仙堂だった。


あとはみんなそれぞれになんとか収まるところに収まった。落ちこぼれの不良(ワル)の受け皿になるのは、定員割れの私立と底辺校のレッテルを貼られた公立だったが、

なんとか押し込んでくれたのは教師たちの涙ぐましい努力のおかげだった。


ダブルだけは服飾科のある高校へ進んだ。もとは女子高で、食物科とか保育科とかある学校だったから、

「いいな~、女がうじゃうじゃいんだろ。ハーレムだな。高校行ったら、女紹介しろよな」

男子ばかりの工業高校に行ったケータがぼやいたが、ダブルは自分の目標をきちんと持っていたからそんな寝言には付きあわなかった。


そらも同じ工業の機械科に入ったが、こっちもそれなりに熱意があった。

バタは県立の農業高校の園芸科に入った。のんちゃんも同じ高校の畜産科に行った。この辺りはとりあえず押し込まれた感じだろう。


カイは私立だが金のかからない新設校へ行った。



紅蓮があるから俺たちの絆は今まで通りだったが、毎日、朝から夜まで一緒につるんでいた中学生の日々は少しずつ過去になっていった。




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