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シャングリ=ラ・ら・ら・・・  作者: 春海 玲
第三章 中三ー秋・冬
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1986冬-2

「今年はクリスマスパーティは無し?」

ようこのグループが俺のクラスに入り込んで、わざとらしい大声で聞いてきた。

「紅蓮のクリスマス集会に出るから、そんなものやってらんねぇよ」

「去年は楽しかったのにね~」


受験を控えたクラスの連中は俺たちからはっきりとした線を引いて距離を置いているが、耳はこっちを向いている。

武田綾香は夏休みの後、俺の方へもう視線を向けることはなかった。


「みんなで酔っぱらってさぁ、いろいろ面白かったよね」

ようこたちは、あははと顔を見合せて意味深に笑う。なんで女はこういう思わせぶりが好きなのだろう。


大体去年のあれはクリスマスパーティなんてものじゃなくて、ケーキでも食うかという話になったらケータがいいところがあるとみんなを引っ張って行っただけの話だ。



※ ※ ※



一年前の中二のクリスマス。

ケータが俺たちを連れて行ったのは知らないアパートの部屋だった。

ドアを開けた女は明らかに俺たちより年が上だったが、「ケータ」と甘えたように抱きついてきた。


途中の自販機で缶ビール、コンビニでポテチの他に金を出し合ってクリスマス用のショートケーキも用意していたが、キキがシンナーを持ってきたので最後は結局そっちになった。

途中からどやどやと女が5~6人入ってきて、他の学校らしい知らない顔ぶれの中に、千種のようこが混じっていた。

「あんぱん(シンナー)あるんだ!」

女たちはもう既に酔っているのか、けたたましく笑ってビニール袋に手を伸ばしてきた。


「俺さ、ちょっとしけこむから」

けーたが部屋の主の女を抱える様にして襖で仕切っただけの隣の部屋に入っていった。

女たちは嬌声と口笛で囃したてたが、俺たちはいきなりの展開に部屋の隅で固まってしまった。


同じ年でも女は年上の男と付き合う分、俺たちよりずっと大人びてセックスにも慣れている。

ケンカなら後に引くことは無いが、こういう場合の対処の仕方がわからないガキの俺たちは狼狽えるだけだ。



俺たちの財布には、前にケータが配ってくれたコンドームが入っていた。

「いいか、ぐずぐずしてると女が醒めちまうから、相手が気づく前に素早くゴムつけるんだ」

身振り手振りを混じえて、ケータは俺たちにレクチャーしてくれた。

「袋の端っこをこう口に咥えて、ピッと破るのが格好いいだろ」


中二の俺たちの間で女と経験済みなのはケータだけだったから、みんなふざけていたが内心はかなり真剣に聞いていた。

そういうことには嫌な顔をするバタも黙って受け取っていたし、キキも興味津々に袋を透かしたりしていた。



襖の向こうで、そういう気配がし始めた。

こっちの部屋では女たちはシンナーや酒で酔っぱらってくすくす笑ったり、ぎこちない俺たちをからかったりしていたが、そらが捕まって女の一人とキスを始めた。

バタは押し黙って、シンナー最優先のキキも女を避けているが、ダブルは自分の好みの範疇しか相手にしない。


「ヒロさん」 ようこが隣に腰を下ろした。

「ケータが呼んだのか」 できるだけ無愛想に聞く。

「さっきの子がケータと会うって言ってたから、押しかけてきちゃった。ヒロさんがいるかなと思ってたけど」

酔っているせいか、学校で会うより甘ったれた口の利き方をしている。いつも濃い化粧をしているが、今日は素顔でひどく子供っぽく見えた。


ぴったりと寄りかかられて、ようこの体温が服を透して伝わってきた。

「お前、二個上の先輩と付き合ってんだろ」そろそろと離れようとすると、わざと体を寄せてくる。

「なんか、あいつ最近浮気してるみたいなんだよね」


誰かがいきなり部屋の明りを消した。

隣の部屋のケータと女の気配がまともに耳に響いてくる。手にじっとりと汗が滲んだ。

ようこの付けている香水の匂いが強くなり、顔を両手で掴まれて振り向かされ、いきなり唇が押しつけられた。殴られるよりびっくりした。

柔らかな唇は一度離れ、すぐにもう一度重なって舌が入ってきた。気持ちがいいより、動揺が強すぎた。


ようこが俺の手首を握り、自分のスカートの裾から潜らせた。いつも穿いている黒いストッキングがなく、生の肌の上を手が滑る。信じられないほど滑らかな手触りに心臓がどくどくと早打ちをして喉が締め付けられそうだ。

逃げようとする俺の手を掴んで離さずにようこは上へ上へと導いていく。膝から太腿のさらに上へ――ようこは下着もつけていなかった。


さっきと同じように、いきなり明りがついた。

俺は素早くパッと手を引きぬいた。喧嘩をした後より汗がびっしょりでそれこそ心臓が口から飛び出しそうだった。

「意気地なしのガキ」 ようこが耳元で笑って、さっと立ち上がって離れていった。


残念というより、助かったという思いの方が大きかった。




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