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シャングリ=ラ・ら・ら・・・  作者: 春海 玲
第二章 中三-夏
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1986盛夏-12

俺たちの仲間は、せっかく手に入れたばかりのバイクを壊されたら嫌だと言う思いがあって、原チャリで来ていた。

ニケツ、三ケツして駐車場から飛び出していく。


「ヒロさん!」

カイがエンジンをかけながら俺の方へ手を伸ばした。

「キキが――」 

「キキは大丈夫だ。バタもそらが乗せてった」

キキはダブルとケータが挟んで原チャリに三ケツで走り出している。


「ヒロさん、大丈夫か!」

ハガが駆け寄ってきた。後ろからトラが泣きながらついてくる。

「ハガ、2年はお前が仕切れ。家に戻って大人しくしてろと言え」

警察が介入する予測はあったから、事前に打ち合わせはしてあった。

「ヒロさん、ヒロさん、血が・・・・」

血の止まらない俺の額を見てトラが泣きながらタオルを押し当ててくれた。


「早く――ヒロさん!」

カイが俺を後ろに引っ張り上げながら切羽詰まった声で叫ぶ。

パトカーのサイレンがもうそこまで来ている。


俺がふらっとしたのを見て、ハガが素早くロープで原チャリの荷台とカイの身体に俺を結びつけた。

待ちかねたようにカイのパッジョグが飛び出す。


ギャラリーの乗ってきたバイクや四輪が蜘蛛の子を散らすように駐車場を走り出ていた。

南野中の奴らのバイクの停めてあった辺りで怒号と悲鳴があがる騒ぎが起こっていたが、確かめる前に俺たちはその場を離れていた。




港の工業団地の西駐車場を対決の場所に選んだのは遊佐だったが、それは大正解だった。

ここは俺たちの縄張りで、毎日のように走り回っているから土地勘もある。パトカーに追われるような広い道は避け、追跡を振り切ってから脇道を抜けて逆に戻り、元の駐車場からそれほど離れていない国道脇の【みやこ食堂】の裏で落ち合うことになっていた。


【みやこ食堂】は国道を行き交う長距離トラックを相手にした昔からの食堂で、24時間営業しているおかげで、バイパスができてからも結構繁盛していた。

暴走族や俺たちも走った後の真夜中によく利用していた。

いつでも温かな定食や麺類が喰えるというありがたい店だった。


国道に面した駐車場はいつも満杯だったが、表からは見えない店の裏にある第二駐車場は仮眠を取る長距離トラックが停まっているくらいだった。

「灯台下暗しだよ。こんな近くにいるとはマッポ(警察)も気がつかないだろ」

一番先に到着していた遊佐が偉そうに言う。


病院から救急箱を持ち出してきていたかずまは、ギプスの足を引きずりながら、みんなの傷を手当てしてくれた。

「これ、縫った方がいいよ」 俺の額をテープで抑えながらかずまが心配そうに言った。

「ガムテープ貼っとけば引っ付くよ」 のんちゃんが覗き込んで言うが、こいつはガムテープ信者だから当てにはならない。


家に帰れと言ってあったハガの原チャリが走りこんできた。トラも後ろに乗っている。

「他の奴らは帰しましたから…ヒロさんが心配だったし」

下の代に心配かけるような頭の自分が情けなかった。


そのうちあさひもチャリに乗ってやってきた。

「南中の奴ら、捕まってパトカーに乗せられてましたよ。転がったままの奴らが5、6人救急車で運ばれてました」

「なんだ、逃げ損なったのか」

「だって、あいつらのバイクがみんなパンクしてて乗って逃げられなかったんすよ」

最後まで見ていたらしいあさひがぐふふっと笑い声を洩らす。

俺たちはいっせいに遊佐を見た。


遊佐は俺たちが戦い始めてすぐにみんなの目がそっちに向いている隙に、南野中の奴らのバイクをパンクさせておいたらしい。

こいつは武器の用意も周到で手際が良かった。絶対敵にまわしたくない奴だとあらためて思う。


その遊佐がカウントを始めた。

「カンカンはトミタに〇、ハガもタイガに○、カイはケンシロウに〇、のんちゃんがラオウに×、ヒロは――」

みんなの目が俺に向かってきた。それから、カイの方をちらっと盗み見る。

タイマンに他のものが手を貸したのだから、いくら仲間内でもこの反応だ。

「まあ、とりあえず5戦のうちの3勝は確定だから、騎兵隊の勝ちは間違いない」


「南中と騎兵隊のタイマンに、秋葉のゲスが出てきたのはいいのかよ」

ダブルが抗議してくれたが、遊佐は首を振った。

「こっちも一校じゃない同盟軍だ。それを盾にされたら文句は言えないだろう」


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