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シャングリ=ラ・ら・ら・・・  作者: 春海 玲
第二章 中三-夏
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1986盛夏-10

工業団地の西駐車場、いつもは午後七時を過ぎれば団地に通勤している車の列も消えひっそりと静まり返る場所だった。

だが、8月31日の夜は、地響きするようなバイクの唸りとチャリにつけられたけたたましいホーンの音が周辺から押し包むように集まってきた。


市の東部を締める南野中と、南西部を版図とする南軍騎兵隊。北部を除けば、俺たちの市を二部する勢力が正面から衝突するというのだから、

どこから噂が広まったのか、当事者でない野次馬のギャラリーも相当数が来ていた。

各々の率いてきたのはほぼ同数の50人ぐらいだろう。だが、これは当代、俺たち三年の間で決着をつける場だ。


「いいか、ステゴロ(素手)のタイマンということになってるが、油断はするなよ」

軍師の遊佐が後ろに隠している箱の中に何が入っているのか、聞くまでもなかった。

俺たちはダブルが徹夜で背中に【南軍騎兵隊】と黄色の刺繍を入れてくれた黒のツナギの戦闘服を着込んでいた。のんちゃんのは特注のデカさだ。

カイは黙々と拳に皮紐を巻きつけている。強靭な足に較べると拳を痛めやすいのがカイの唯一の弱点だった。


「絶対負けるなよ!」

病院を抜け出してきたかずまも、足首にギプスをはめたまま俺たちに檄を飛ばす。


8時になると両陣営から代表が前に出た。

「騎兵隊、やっちまえ!」

「南中ぶっ潰せ!」

背後の仲間たちから応援の声が飛び交う。ギャラリーの間からも、それ以上の興奮した歓声が上がった。

「――ヒロ、がんばれ!」

一際高い女の声はようこだろうかと聞き分けるぐらいには、俺は冷静だった。


ラオウとケンシロウはやはり出てきた。名前負けしないガタイをしている。遊佐が確認し、のんちゃんとカイに合図する。

トミタが出てきたのでカンカンが対峙し、最後はタイガがバタと向かい合った。


カイの身体が躍り上ったと見えた瞬間にケンシロウがのけぞった。それを合図にのんちゃんがラオウに突進し、カンカンとバタも相手に飛びかかっていった。

「俺らも始めようぜ、ション」

目の前でニタニタしているションに声をかけて身構える俺に、「お前の相手は俺だよ、千種の頭」

ションの背後からゆらゆら出てきた男が声を発した。


「騎兵隊のトップもお前なんだって?」

顔を見たことも無い男だった。ションも嫌な雰囲気を持つ奴だが、こいつはさらに背筋がざわつくようなヤバいものがあった。


体格は俺より頭一つデカい。格闘技をやっている奴は構えを見ればわかるが、ふわっと立っているだけで威圧感は見せない。それでも絶対に油断できない相手だと言うのがわかる。

背後でギャラリーがざわつき始めていた。

「ゲスだ・・・・秋葉のゲスだ」

「秋葉がなんで南中に加担するんだ」


遊佐が走り寄ってきて、ションに詰め寄った。

「お前がやるんじゃないのか、南中の頭はおまえだろ!」

「てめぇらも同盟組んでて偉そうな口をきけるのかよ」

いっそうにやつくションの傍らで、見知らぬ男は右手をひらひらと煽って俺を挑発する。

「俺がお前とやりたいって代わってもらったんだ。来いよ。親父の看板だけでイキがってるかどうか試してやるよ」


「秋葉の小菅明大(こすげあきひろ)。やり方がゲスイからゲスって呼ばれてる奴だ。秋葉の頭じゃないが、実力じゃNo.1だろ。幸運を祈ってるからな、ヒロ」

素早く俺に囁いて、遊佐はセコンド席に戻って行った。

幸運を祈ってもらっても何の足しにもなりそうもない。


秋葉中は市の北部にあるが、ワルの巣窟として南野中とは似たりよったりで、二つの中学は面と向かって抗争はしていないが常に対立している。手を組むとは思えないが、騎兵隊の台頭に面白くは思っていないだろう。


ちらりと闘いの最中の仲間を確認する。

のんちゃんはラオウに苦戦していた。力もほぼ互角だし、相手も柔道の心得があるんだろう。技(わざ)が掛けにくそうだ。

カンカンはトミタをぶっ倒して馬乗りになって殴っているが、バタは動きの速いタイガに形勢が悪い。

カイはケンシロウのデカい身体とそれに反するスピードに、いつになくもたついているように見えた。


一瞬、カイの目が俺を見た――俺を心配している不安が覗いている。


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