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シャングリ=ラ・ら・ら・・・  作者: 春海 玲
第二章 中三-夏
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1986盛夏-2

「ショーヤは俺の兄貴みたいなもんだ。親父同士が中学時代からのツレで、前は首藤組の若頭もやってたんだけど、死んじまってからは、ショーヤのおふくろと一緒に俺の家で暮らしてる」

「あのデカい家に一緒に住んでるのか」

「離れがあるからそっちに住んでる。俺のおふくろが身体が弱いから、ショーヤのおふくろが生活の面倒見てくれてるんだ」


ショーヤに頭の上がらない自分を見透かされたようで、焦って言い訳めいたことを言ってる自分がみっともなかったが、

「ガキの頃あそこに越したんだけど、俺とおふくろは親父からあの家に捨てられたような気がしてた。そんなときショーヤの親子が来てくれたから、嬉しかったんだ。ほんとの兄貴ができたみたいで」

と、余計なことまで口走ってしまった。


「・・・兄貴がいるのは・・・いいだろうな」

原チャリに跨りながら、カイの口調は柔らかくなった。

「時と場合に寄るけどな。ショーヤは優しくないし・・・そらなんか、兄貴二人に可愛がられてて羨ましいけどよ」



そらがいつもにこにこしてるのは、二人の兄貴がめちゃくちゃ可愛がっているからだ。

自動車修理工場をやっているそらの親父さんは自衛隊が好きで、陸海空と三人の息子に名前を付けたが、今のところ誰も入りそうもない。


工場を手伝ってる長男の陸さんはそらの仲間の俺たちの原チャリの修理にも手を貸してくれる。

高2のマリンさんは昔からタクロウさんやショーヤのパシリだけど、二人とも好きだからと楽しそうだ。俺たちにも先輩面しないで優しい。


マリンさんの代の他の先輩は悪かったから、いつもなだめ役で貧乏くじを引かされてたけど、みんなに好かれていて舐めてかかる奴はいなかった。



※ ※ ※



【ジャバ】で会ったそらは、いつもよりもっとにこにこしていた。

「バイトの話があるんだけどさ」

原チャリでない本格的なバイクを手に入れなくてはならない俺はその話をそらにして、掘り出し物を探してもらっていた。だから、金はいくらでも欲しかった。


バタは爺さんの手伝いで忙しかったし、ケータは毎日女の子とのデートに飛び回っていた。

ダブルは、その裁縫の腕前を【ベンクー】の親父に見込まれてスカウトされ、裾上げやサイズ直しのアルバイトで高給取りになっていた。


キキは担任の川端がその絶望的な成績を少しは何とかしようと7月中は毎日補習へ呼び出されている。

俺たちも危なかったが、期末テストの出そうなところを遊佐がヤマをかけてくれたのを丸暗記してぎりぎりセーフだった。


気の合いそうもない奴だと思っていた遊佐は、意外に面倒見がよく、何より本当に頭がよかった。俺たちはあいつに足を向けて寝られなくなった。



「だからさ、暇そうなのはヒロさんぐらいなんだよね」

カイも解体屋の松爺の手伝いをしているから、ほんとに暇なのが俺だけだというのは正解だ。

「明後日25,26日の廣幡神社のお祭り、テキヤの屋台で焼きソバ売るんだ」


廣幡神社は俺たちの学区にある小さな地元の神社だが、古くからの由緒があるらしく、神輿の出入りなどあって夏の祭礼はなかなか賑やかになる。

色んな屋台が出て、俺も小学校の頃は結構楽しみに出かけて行ったものだ。


なんでもそらの親父さんの知り合いのテキヤが昨日の夜からぎっくり腰になって動けなくなり、すぐに代わりが見つからず、

二人の兄貴は町内の神輿の担ぎ手に召集されているから、そらに話が回ってきたらしい。


「俺、料理なんかしたこと無いぞ」

「俺は前に手伝ったことあるからやり方はわかってる。ソバは俺が焼くから、ヒロさんは客を呼び込んだり売ったりしてくれよ。

売り上げから材料費を引いた儲けの半分をくれるって言うからさ」


そのくらいなら俺にもできそうだし、廣幡神社の祭礼を仕切っているのは首藤組だから、そらは俺を用心棒代わりにもするつもりなんだろう。


「俺も焼きソバ買いに行ってみようかな」 カイも興味を持ったようだ。

「おう、来い。奢ってやる」

「ヒロさん、奢りは無しだよ。ちゃんとみんなから金貰ってくれよ」

そらがぴしゃりとダメ押ししてきた。



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