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シャングリ=ラ・ら・ら・・・  作者: 春海 玲
第二章 中三-夏
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1986初夏-5

童貞のガキの俺たちは、何だか意気消沈してとぼとぼと土産物店を覗きに行った。

それでもすれ違うどこかの修学旅行生らしい中高生とは、一瞬のガン飛ばし合いを忘れなかった。

田舎者ほど気合の入った変形の学ランを着込んでいるから、お互い同族嫌悪の目で蔑視する。



家には喰いものを買って帰ればいいから後回しにして、俺はキキに何か土産を買ってやりたかった。

そらやクーガ達は京都の刻印のある模造刀や木刀を物色しているが、あんなものは実用には向かない。ダブルはあぶらとりの紙を大量に買い込んでいる。

あれは姉さんたちに命令されてきたに違いない。バタは爺さんに湯呑を買っていた。


他の学校の修学旅行生らしい女子中学生のグループが細々したものが置かれている棚を囲んできゃあきゃあと騒いでいた。キティとかマイメロとかわめいている中で、「キキ」というのを耳が捉えた。

そこにいた女にどれだと聞くと、「サンリオから出てる双子のキキとララじゃなかったっけ?」


寝巻を着たチビが二人並んでいるのがそれらしい。青い短髪が男のようだから、これがキキか。

背中にデカい布団を背負ってるとつぶやいたのが聞こえたらしく、そこにいた女たちが一斉に笑い出した。

「これ、星よ」

男の友達に土産にしたいと言ったら、キーホルダーになったものを選んでくれた。

「どこから来たの?」

「彼女とかいる?」

うるさく聞いて来る。


「あ、ヒロさんがナンパしてる」

「どこのガッコ?」

「その制服可愛いね」

「俺たち暇だから、時間あるならお茶でも一緒に飲まない?」

ケータに刺激されていたから、たちまち女たちを囲んでこっちもうるさい。


カイは――と周りを探すと、奥のケースの前で珍しく真剣に悩んでいるのが見えた。

近づくと、ケースの中には少し値段が高めの指輪やアクセサリーが並んでいる。

「どこの女に土産買うんだよ、カイ」

「――美佐ちゃん・・・俺のおふくろ・・」

カイが選んだのは、赤いルビーの付いた金色のブレスレットだった。


ケースの中には他の色の宝石の付いたブレスレットも並んでいた。

4500円もしたが、どうせ偽物のガラス玉だろう。

カイが美佐ちゃんに土産を買ったのなら、俺も買わなくちゃならない気がした。買うなら、かあさんとかなえさんの両方だ。

旅行に決められてた小遣いは一万円だが、俺はこっそりもう二万貰ってきてる。


しばらく悩んだ後、結局色違いの緑のエメラルドと紫のアメジストのブレスレットを買った。

俺がこんな土産を買って帰ったら、二人がどんなに驚くか、それを考えると妙に満足した気分になった。

金を払ってキキのキーホルダーも一緒に包んでもらっていると、店の前が騒がしくなった。

そらやバタの怒鳴り声も聞こえる。


慌てて走り出ると、知らない学校の学ランの奴らが、俺の仲間と睨みあっていた。

「何、人のガッコの女に手ぇ出してんだよ!」

さっきの女どものツレなのか、中ランにボンタンのパンチパーマが肩をそびやかしてねめつけてくる。後ろにいる5、6人も似たような格好だ。

どうせ修学旅行の田舎者が粋がってるんだろうと、自分たちのことは棚に上げた。

こっちもすでに臨戦態勢だ。さっき買ったばかりの木刀がもうみんなの手に握られていて、観光客が行き交う路上で一触即発の状態だ。


一番先に飛び出して、先頭の男を蹴り飛ばしのはやっぱりカイだった。

わっと揉みあいになるかならないうちに、「警察が来たぞ!」 周囲に群がった野次馬から声が上がった。


田舎と違って天下の観光地の警察は速いと感心する間もなく、敵味方とも一斉に走り出した。

ここで捕まるわけにはいかないし、迷ったらそれまでだから必死に走った。






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