1986春-24
【ジャバ】は千客万来で潤う玄さんが、にこにこと機嫌よく俺らの会合を待ち構えていた。
「騎兵隊の同盟だってわかるようにしたいな。おそろいの服とかさ」
かずまは一番乗り気で、みんなの顔を見回しながらうんうんと頷いている。
「だめだ。金がかかる。今の段階で総勢50人を超すだろう。人数分そろえるにはかなり金が要るぞ」
遊佐は相変わらずの仏頂面で首を振る。資金調達にカツアゲとか考えないところが、警察官の息子たる所以だろう。
「じゃぁ、Tシャツなら」
かずまはお揃いのユニフォームが何としても欲しいらしい。
「まあ、待て。俺にいいアイディアがあるんだ」
うちの軍師のダブルがまた仕切りはじめた。
「アメリカの本場の南軍騎兵隊は黄色がシンボルカラーだったんだ。だから、黄色を共通の小物に使うんだよ」
ダブルは学校の図書室にまで出向いて行って、騎兵隊の衣装を調べてきたらしい。
「黄色の鉢巻は嫌だぁ。格好悪い」 のんちゃんの鼻は曲がったままだ。
「黄色のTシャツなんか絶対着ないぞ」 遊佐もそっぽを向く。
ダブルは愚民を見下ろすお代官様のように、厳かに言い聞かせた。
「冬は学ランに合うように黄色の腕章を作る。夏は黄色のブレスレット。一番金がかからなくて、結構目立つだろ。ね、ヒロさん」
だめだとは言わせないぞという目で振りかえられると、「そうだな」としか言えない俺は、お飾りの頭の様な気がしてきた。
見本にと持ってきた腕章は鮮やかな黄色の布でできていて、しかも黒で【騎】の刺繍入りだった。
「これ、格好いいな!」
「俺が姉ちゃんのミシン借りて自分で刺繍したんだから、費用は材料代だけだ」 ダブルは得意そうに鼻をうごめかす。
ダブルの家は中央駅の近くに婦人服のアマリリス洋装店を出している。昔は注文で仕立ての服を扱っていたらしく、今でも店の一部に生地を置いてオーダーも受け付けていた。
俺のかあさんも夏服をアマリリスで仕立てていた。
ダブルは年の離れた姉ちゃんが三人もいて、何かと口出しされるのが嫌でひねくれたらしい。不良に憧れたというより、学ランしか着れない中学でもおしゃれな変形が着たいという理由で俺らに近づいてきたのは丸わかりだった。
意外に切れやすく、腕っ節もなかなか強かったが、本質的な部分で俺たちとは違っていた。
その当時はそれが何かわからなかったが、ずっと後になってそれが俺たちの間を明確に分けることになる――ダブルは、将来(さき)を見ることができた。
ダブルが夜も寝ないで刺繍をした渾身の腕章が人数分揃った5月第一週の日曜日、俺たち【南軍騎兵隊】のお披露目の日がきた。




