第四夜
10月4日――
この日、我がアホの飼い主率いるチーム『NIGHT SPEED』は全員参加の旅行に来ていた。
その名も・・・
「天才的頭脳を持つ会長発案、みんなで行こうよ修学旅行!in箱根」
渚さん、そして、閣下(澪ちゃん)のポロリも期待してくれ!!
「みんな、集まってるかい!?」
アホが人目も気にせず、大声を上げる。
渚さん、あの恥ずかしい生命体を黙らせてくれ。
「まぁ、いいじゃない。会長、楽しそうだし・・・」
・・・・。
周りを見渡してみる。
閣下と光臣の距離が若干、近い。
こういう機会は滅多に無いのであろう、心なしか、楽しそうにも見える。
この二人には、旅行を楽しんでもらいたいものだ。
渚さんは、やる気満々だ。
実は、彼女は人妻で、二児の母なのだ。旦那も走り屋らしいが、あくまで楽しむ程度だそうだ。
この旅行も、旦那の承認を得ているので、なんら問題はないらしい。
最後に、俺の飼い主。
こいつは言うまでもないだろう。というより、言い出した奴が、やる気が無い、なんて言いやがったら、俺のネコパンチが火を噴くだろう。
「では、各自、車に乗り込み俺に続け!!」
俺は、何時の間にか、背後に回り込んでいた閣下に抱きかかえられ、Z32へ放り込まれた。
むぅ・・・。
なんとも言えない空気が車内に充満していた。
「・・・・・」
・・・・・・。
「・・・・・・」
・・・・・・・・。
「私ね・・・・正体、渚ちゃんにバレちゃった・・・」
ニ・・・ニャーーー。
「ネコちゃんもいたでしょ?この間のアレ・・・バレてないと思ってるの?」
な、なんと!?気付いていたのか。なかなか、侮れんな。
「でも、可笑しいよね。チームで一番強いみっくんが気付かないなんて・・・・少し笑えるね」
微笑む閣下、いや、澪ちゃんは愛らしい少女のようだった。
さて、俺たちは数時間かけて、箱根峠の近くにある旅館にやってきた。
俺は閣下に抱きかかえられ、車から降りた。
やはり、飼い主にするならこういう人がいいんだろうな。
アホを筆頭に、旅館のロビーで手続きを済ませ、俺は渚さんと閣下の部屋になった。
我が飼い主は、
「おい、閣下がなんで渚と一緒なんだ?」
渚さんの眼が鋭く光る。
「クス・・・貴方が気にする事じゃないわ」
そんな凄みに怯むことなく、アホも粘る
「だがな、渚も一応、女だ。男と同じ部屋ってのはなぁ・・・」
「一応、ってのは余計だけど・・・。心配はご無用。このチームでアタシに勝てるのは、光臣くんぐらいよ」
我が心配性の飼い主は、しばらく唸ったが、
「まぁ・・・それもそうだな」
と、こんな感じで丸く収まった。
そして、今回の目玉イベントの一つ、
「温泉大好き会長提案、行くぜ!箱根露天湯巡り!!」
しかし、このイベント、特筆すべき事象は起こらなかったので、割合させて頂く。
夜11時。
俺たちは、我が予測不可能なリーダーに呼び出された。
「お前ら、俺たちがただ温泉旅行しに来たわけじゃないのはわかってると思うが・・・」
そう、ただの旅行ならバスや電車でもいいのだ。
にもかかわらず、わざわざ愛車で来たのか・・・。
そう、なにか走り関係のイベントが無いはずがない。
「えぇっ!?そうなんですか!?」
・・・例外もいたようだ。
「ふふふ、光臣くん・・・馬蹄崩拳!!」
「ぐぇ!!」
はぁ・・・・・。
「そんなことはどうでもいい!!本題は、今日、この箱根峠で俺の親友が、「暴君」とバトルするから、それを見て走りを見直そう、ってことだよ」
一瞬、空気が変わった。
「暴君って・・・まさか、榊原くん!?無理よ、勝てるはず無いわ!」
珍しく渚さんが慌てている。
「それで、その友人ってのは・・・?」
光臣が尤もな質問をした。
「・・・名は闘侍、箱根では「紅蓮の彗星」で通っている。実力はあるんだが、如何せん相手が相手だけにな・・・ま、とりあえず行くか」
俺たちはバトルステージである箱根峠へと向かった。
後編へ続く・・・・