序章 who
この憎しみ万年先も忘れはせん。
序章 who 1 少年は骸の様に虚ろに遠くを見る。 正人の通う高校の図書室からはいい景色が見える。そこから見える隣街に建つひときわ大きなビルを眺めてる。彼は当番の時は良くその景色を見ている。彼の高校では無論、図書委員会が図書当番をする。各当番を一日おきに変える。今日の図書室の様子はいつもよりかは人がおらず、うるさくも無くこじんまりとしていた。 彼はじっと外を見ている。 「中上くんまたぼっと外を見てる!」 話をかけてきたのは同じクラスで今日は非番の新宮 陽夏だ。正人は彼女の鼻にかかった奥ゆかしさのようなものがある声が気に入ってる。 新宮よりも陽夏のほうが響きがいいので下の名前でいる。 「はい、これね。」 「うん。あれ?これ返却期限過ぎてんじゃん!陽夏が珍しいな。」 「だってしょうが無いじゃん。それ長いんだからさ。」 「ま、それもそうか、次は早めにかえすんだぞ。もしかしたら、返してもらうのを待ってる人がいるかもしれないからな。」 「それくらい言われなくても分かっているわよ。」 陽夏の鼻筋の通った美しい顔が正人に優しく微笑みかける。