099 ギルティ
099 ギルティ
「言い逃れは許さないよ。」
突如現れた人物は、ニヤリと笑う。シルクハットの男は片眼鏡のズレを直すと、男爵をにらみつけた。
「何か言うことは無いのかい?」
「ダニイル卿にはご機嫌麗しく。」
搾り出すように挨拶をする。
「麗しくないよ。任せた仕事を自分の都合のいいように行い、領民に圧政を敷く豚が居るからね。」
「そ、そんな。滅相もありません。そこの冒険者共の暴走です。」
街の状況を見れば圧政をしていないとは言い逃れができない。ただしそれを自分の所為ではなく、子飼いの冒険者に擦り付けるのはいかがなものだろうか。
「これ、なーんだ?」
言葉と同時に1枚のカードを取り出す。光沢のある金属製のカードで、何かの模様・・・いや、刻印が刻まれている。
「さて、こうして出されるという事は、ただのカードという訳では無さそうですが。」
「本当に往生際が悪いね。」
カードに魔力を流すと、男爵の声がカードから聞こえてきた。
―
「普段は、正体不明の一団からの治安維持でしたね。今回は領主紋偽装罪に決まりでしょう。」
「判りました、ではその様に。」
「後継者の居ない領主など恐れるに足りません。この街は既に私の領地なのです。」
―
「それは!?」
「全時代の技術に『録音』ができる機械があったそうなんだ。それを現代の魔法技術で再現したものだよ。」
男爵は顔面蒼白になり、冷や汗を滝のように流している。なんというか気持ち悪い。
「この前、そちらの女性が部屋に来ただろ? その時に発動させたみたいだけど気がつかなかったのかい?」
サヤーニャに目配せした。
「刻印士として未熟だった頃の仕事があったから、そのとき悪戯でつけていた機能を働かせただけですよ。」
そう言い、扉を指差した。
「あの扉には、スパイ対策として施した刻印以外に色々な刻印が刻まれてるのよ。威圧・堅固はもちろん、結界や蓄音、後は今回発動した遠話と蓄音転送ね。ダーシャ君も勉強になるから、後で見ると良いわ。」
決して、未熟な刻印士ができる仕事ではない。
「貴族をしてると、自分に不利な会話もあるでしょ。証人が居ないのなら録音は大事な証拠になるのよ。」
自分の仕事に誇りを持っているのか、エヘンと胸をはる。
「さて、君に対する判決だが、既にストリギン男爵とは話をしている。」
クイッと片眼鏡のズレを直す。
「様々な捏造。領主反逆罪。そして何より、僕の息子を陥れた罪。この5年間、妻達がどれ程辛い想いをしたか君にはわからないだろう。」
怒りに触れて、青い顔が真っ白になる。自分の罪を数え、極刑が免れないと悟ったのだろう。
「残りの人生全てを使って、鉱山で働いてもらおう。恩赦は一切なしだ。死ぬまで働け。」
冷たく言い放つ。そして、部屋の後ろに控える白髪の執事に声をかける。
「君も大変だったな。」
「いえ、滅相も有りません。兄共々、グリエフ様の下で働かせていただいている事に心から感謝しています。」
「君の次の仕事は決まっているが、少しは休暇も必要だろう。たまには兄の元で休むといい。」
「ありがたいお言葉です。」
そして、いよいよ俺を見つめる。足の先から頭のてっぺんまで、じっくり見つめると二コリと笑って両手を広げた。
「お帰り、ダーシャ。立派になったね。」
「父上!」
俺は、父の胸に飛び込んだ。
「大変だったね。でももう大丈夫だ。君の罪は冤罪として国中に告知されている。君は何も悪くないんだ。」
父の胸の中で、頬に涙を垂らした。この5年間思い悩んだ『父への迷惑』が無くなったんだ。
「さぁ、家に帰ろう。ナターシャ達には教えてないから、きっとビックリするよ。」
そう言うと、何も無かった空間に波紋が広がり、その向こうには懐かしの我が家が見えていた。
後輩:先輩聞きました?
ポーニャ:何を?
後輩:ダーシャ君って、領主様の息子だったみたいですよ。
ポーニャ:(ガタン)なんですって!?
後輩:瓦版で号外出てますよ。
ポーニャ:ということは、私は未来の領主婦人になるのね?
後輩:ありえませ・・・
ポーニャ:どうしましょ。エステに通って、美しさを維持しなきゃ。
後輩:せんぱ・・・
ポーニャ:こうしちゃ居られないわ。今日は早退するわ。ダーシャさまぁぁぁぁぁ
(あっという間に走り去るポーニャ)
後輩:今日の先輩は欠勤と(キュッキュ)




