095 あの日の真実
※今回も戦闘シーンにつきものな残虐なシーンがあったりなかったりします。
苦手な人は明日の前書きで纏めますのでそれを待っていただくか、私の書く残虐シーンだから大丈夫だろうと覚悟して読んでください。
095 あの日の真実
拮抗していた空気は一瞬で変わった。
マント姿の男と対峙していた相棒に、片腕を駄目にされた男が飛び付き、残された腕に持ったショートソードで相棒を貫いた。
それを見たマント姿の男は、刻印を掲げると、味方の存在も無視して発動した。
「バディ!!!」
一瞬の出来事に目を奪われた。
相棒は飛び付いた男と共に全身発火した。肉を焼く嫌な匂いが当たり一面に広がる。さらに、相棒の腹からは真っ赤な血が流れ出し、
消火しようと駆け寄ろうとすると、残りの男達に囲まれてしまった。
「おい、兄ちゃんよ。そんなに急いで何処に行こうってんだ?」
「貴様ら、仲間が火達磨になっているのに、よくもそんな戯言を言えるな。」
「仲間か。確かに仲間だよ。最後の最後に自分の取り分を俺達に分けてくれるんだからな。」
「大丈夫さ。兄ちゃんのペットも綺麗に焼けてメシになってくれるさ。」
ワッハッハッハッハとあざ笑う男達を押しのけて、着ている服を叩きつけて相棒に着いた火を消火する。
「よかった・・・。生きてる。」
「それは良かったな、兄ちゃん。」
状況は最悪だ。冷静に考えれば、相棒を見捨てて領民を助ける事を最優先させなくてはいけなかった。
俺の首筋には、剣の切っ先が突きつけられている。
「さて、仲間想いの兄ちゃんにはもう一度選ばせてやろう。1つ、俺達に気持ちよく『月の滴』を渡す。2つ、このまま首と胴体を切り裂かれて、『月の滴』も奪われる。」
その言葉を突きつけられながら、俺の体は他の奴らに取り押さえられる。
「まぁ、餓鬼を殺しても楽しくも無いが、残念ながらお前は領主の犬だ。Sランク冒険者を退治するまでは生かしておいてやるよ。」
そういうと、商人風の腹ぼて男は俺達の荷物を漁り始めた。
「この箱だな。」
見覚えのある、『強固』の刻印が刻まれた金属製の箱が目の前に置かれた。
「さて、当然の様に封印されているか。」
斧をもった男が自慢の武器を振り下ろす。
―ガキン―
全力で振り下ろされた斧の刃は、箱の強度に負けて潰れていた。
「おいおい、何だよこの堅さ。この斧にも『強固』の刻印きざんでんだぜ。ふざけんなよ。」
そのイラツキを発散するように俺の顔を蹴り上げた。
「まぁまぁ、自分の武器の脆さを少年に当たってはいけませんよ。」
マント姿の男が俺の前に座る。
「一度陽光反応が出たということは、貴方がこの箱を開けることができるのですね。さぁ、貴方の魔素を出しなさい。」
髪を掴み、箱の前まで引きずられた。
「自分が魔素を出さなければ、この箱が開く事が無いと信じているでしょう?」
俺の心を読んだかのごとく、終わりの一言を発した。
「この刻印を発動させることで、他の刻印効果を阻害できるのですよ。」
そう言うと、俺に見せた刻印が淡く光った。
「この刻印はすばらしい戦歴があるんですよ。なんと言っても、デビューがあの領主の息子の作品を壊したことですから。」
その言葉に、改めて男達の顔を見定める。
全身革鎧の男・商人風の腹ぼて男・斧をもった男・マント姿の男・ボウガンを持った男そしてリーダー格の男。
ああそうだ。確かにあの時の冒険者だ。商人風の腹ぼて男はあの時、大型搬送具の積載量を褒めていた男だ。マント姿の男は大型搬送具の刻印を俺から聞き出そうとした男だ。リーダー格の男は俺に試験の成功を約束した男だ。
そうか、こいつらは俺の邪魔をする為にあの仕事を請けたんだな。
「そんなに、自分の仕事が失敗するのは残念ですか?」
こいつらは俺が領主の息子とは気がついてない。俺の変化した顔色を都合よく勘違いしてくれた。
「判ったよ。魔素を出すよ。」
諦めの混じった声に満足気な笑顔を見せる。
「月より飛来した我らが眷属よ。わが魔素に呼応して、汝の新なる姿を見せよ!」
俺の唱えた祝詞に男達は驚愕した。その馬鹿面は、俺の胸元から光りを放つ『月の滴』に照らされていた。
クライマックスなのに、作者の技量が足りてない感が半端ない・・・
見捨てずに最後まで読んでいただけると幸いです。
PS:台風対策で明日の更新は夜になる可能性があります。




