008 呼んだよね?
消灯時間が近づいたので、きりの良いところまで何とかこぎ着けました。
「ふっふっふっふふーん」
上機嫌で好きな節をつけて鼻歌を唄うのは、この領地の領主である。その後ろをテケテケと同じく上機嫌で歩くその妻。
少し離れて、どうやってこの場から逃げ出せるかとタイミングを覗っているダーシャとその手を引いて歩くマーシャ。どうあがいても逃げ出すことは不可能だ。
こうなったらどうやって相棒を好きになてもらえるように紹介するかを考えた方がよっぽど有意義ということに気が付き、今度はなにも準備をしていないことに思い至りまた渋面をつくっている。
「どんな人だろう?子供じゃないってことは、他の領地から逃げ出してきた傭兵かな。いやいや、頑固一徹なドワーフと洞窟で仲良くなったって線も捨てがたいな。」
妄想で頭の中がピンク色になって、外にあふれ出している。そんな亭主を少しばかり白い目で見ているが、子供の作った友達はやはり気になる。
「嫌ですよあなた。むさ苦しい傭兵やドワーフはダーシャの友達に似合いませんよ。そうですね・・・。森の片隅に隠れているリスやフェアリーだったらどうしましょ。フェアリーちゃんだったら、あのお人形さんのお服を着せて、着せ替えごっことか楽しいわよね。リスちゃんだったら、この前の税収で納められた胡桃をプレゼントしちゃいましょう。」
母は母で、やはりピンク色だった・・・。
一方ダーシャの秘密を暴けるマーシャにとっては、相手が誰だろうと関係なかった。自分にしていた隠し事の内容をようやく暴けるのだ。一時期は気になって夜も眠れなかったのだから、今日というこの日を月に感謝したいくらいだ。
四者四様の面持ちで獣道を進んでいく。
「父上、そこを右に曲がってください。」
幾度目かの藪をくぐりぬけて目的の洞窟に辿りついた。
「へー。こんなところに洞窟があったんだ。」
思えば、物ごころついた時から街や村に顔を出していた。森の管理はすべて木こりに任せていたので、こんな奥深くまで入ったことはなかった。
「うちから20分。フェアリーちゃんに会うついでにダイエットできるわね。」
すでに会うのをフェアリーと決めた母は、相棒を見たらどんな反応をするのだろう。父やマーシャももう会うのを止めろと言わないだろうか。
そんな心配をしながらみんなにお願いをした。
「今からバディを呼ぶよ。でもすっごい人見知りだから、みんなの顔をみたら怯えるかもしれないんだ。だから、最初は入り口で待っててね。」
そう伝えると一人で洞窟の中に入って行った。
「バディ!来たよ。」
タタッタタッ
小気味よい足跡で現れたので、1匹の小さなオオカミだった。
もふもふ教の方、次回にご期待ください。