077 悪代官と民衆
相棒の情熱的な起こし方で目を覚ましたサヤーニャと一緒に食堂に下りた。途中サヤーニャは井戸で顔を洗ったのは言うまでも無い。
朝食はセリャンカとポーチドエッグにパンだ。何でもセリャンカは昨日作りすぎたらいが、二日目の方が美味しかった。味が熟成したというのか、落ち着いてまとまったというか、こっちの方が俺は好きだ。
他に客も居ないので、アンナと女将も一緒に食事を取っている。
「そういえば女将さん。アンナってひょっとして獣耳とか尻尾とかついてたりする?」
-ガジャン
スープにスプーンを落とした。
「あら、何でしってるの? まさかお風呂でも覗いた? 」
慌てて、飛んだスープを拭きながら、えぐい返球をしてくる。
「いや、そんな非紳士的な事はしませんよ。いつも頭巾をかぶってるから気になっただけだよ。」
危ない、俺がスープを吹くところだった。横に目をやると、アンナは頬を染めていた。いや、本当に覗いたりしてないから。
「確かにアンナにはついてますが、獣人は嫌いでしたか?」
「ううん、こんなかわいい獣人なら大歓迎だよ。」
かわいい発言でアンナのピンクに染まった頬は、さらに赤みを増した。
「コホン。俺がこの前まで居た炭鉱に『無実の罪を訴える、以前宿屋で働いていた猫の獣人』が居てさ、ひょっとしてご主人じゃないだろうかて思ったんだ。」
「それは本当ですか!?」
椅子から乗り出して
「落ち着いてください。」
「す・・・すいません。」
椅子に座りなおした。
「確か名前は、グスタフ。そう『グスタフ・プラチェク』だったはずだ。」
「神様・・・。」
天を仰ぎ、頬に光るものを伝わせる。
「間違いないです。うちの人です。」
女将とアンナは抱きあって泣いている。行方不明の主人の所在が分かったんだ。圧迫されていた思いがあふれ出し、二人ともすごい顔になっている。
「炭鉱は伝があるから、グスタフの様子を手紙で送るように伝えておくよ。」
「ありがとうございます。でも、対価を払うことができないのです。さすがにアンナは駄目ですが、私でよければ好きにしてください。」
そう告げると、意味深に胸のボタンを1つ、ポチリと外した。
「いや、あの、そういうのは良いですから。」
「そうよ女将さん。」
ニヤニヤと俺を指差しながら
「童貞君にはまだ早いわ。」
いやね、何を言うんですかサヤーニャさん。確かにそのような経験は無いですが、紳士たるもの最愛の人以外と肌を重ね合わせたりしないものですよ。決して恥ずかしいからとか、興味があるけど勇気が無いとか、そんな訳じゃないから強く抗議するよ。
「これで、代官は黒確定ね。」
「そうだな。」
「ダーシャ君は切り札としてまだ使わないとして、私がSランク冒険者として抗議してくるわ。」
「いいのか?」
「何かあったら守ってね。」
そういい残すと、1人宿から出て行った。
悪代官に苦しめられる家族
その家族を助けるために立ち上がるサヤーニャ
主人公はダーシャ君なのに・・・あれ?




