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月の滴  作者: あれっきーの
遥かなる家路
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064 傍若無人じゃないんですよ

第3章突入です(キリッ




 2人を見送り、俺達も馬装場を後にした。泊まる宿は決まってる事だし、ギルドでの用事を済ませてしまう事にした。颯爽と歩くサヤーニャを追いかけてギルドに入る。


 ギルドに入ると他の冒険者達からの視線を集めた。羨望と畏怖を混同した視線はサヤーニャに向けられた物。己以上に名声や実力を持つサヤーニャに憧れもあるのだろう。


 一方胡散臭いガキを値踏みする視線は俺に向けられたものだ。今このギルド内に居る人間で最年少は間違いなく俺だ。実力があり見た目も美しいSランク冒険者(サヤーニャ)の後ろを、冴えない若造()がテクテク付いて歩くのが彼らには気に食わないのだろう。


 と言っても、今ここに居る人間は俺達以外だと、遠巻きに見ている髭のオッサン5人とこっちを見据えて微動だにしない受付嬢だけだ。その受付嬢にしても、妙齢の女性で結婚しているだろう。左手薬指のリングが、冒険者達からの誘いを断る意思表示だろう。

 最近の結婚適齢期は知らないが、5年前は18と言ってたから、少なく見積もってもそれ位だ。


 そんな視線を気にすることなく、サヤーニャはツカツカと受付までまっすぐ歩く。目的地に居る受付嬢は顔を徐々に青くしながら、蛇に睨まれたカエルの様にピクリとも動かない。そんな中でも笑顔を崩さないのは仕事に対するプロ意識を感じさせる。

 普段は無骨で強面な冒険者(おっさん)達を相手にしているのに、サヤーニャに対してここまで怯えるのは何故だろう。サヤーニャをSランク冒険者と知っているのか、それともさっき依頼達成で何か一悶着あったのか、その両方の可能性が高いけど気にしない事にしよう。


「ちょっと聞きたい事があるんだけど良いかしら?」


 「駄目です」と言わせない迫力のある一声に受付嬢は「ハイ」としか応えることはできなかった。


 腰のポーチから、昨夜預かったタダムのタグを取りだし受付に渡す。


「そのタグの持ち主の情報と今受けてる依頼の情報を知りたいの。」


 個人情報を開示しろと要求している。身分証明に使うとタダムに言っていたが、受けている依頼情報の開示まで要求するとは。俺の考えが足りなかった。


 一方ギルドとしても、一方的な情報開示に従う理由は無い。


「大変申し訳ありませんが、ギルドの規定により持ち主の個人情報をお教えするわけにはいきません。」


 丁寧な口調で頭を下げるが、顔色はさっきより悪い。大丈夫ですよ。お姉さんにいきなり攻撃するような人じゃないですよ。


「いきなり言われたら確かにその通りよね。」


 受付嬢の言葉に同意を示すサヤーニャ。受付嬢もほっとした顔をしている。他人を襲って家探しをする冒険者が居ないとも限らないので、理由なき情報開示はできあないのだろう。


「開示根拠は、その人のパーティーに昨夜襲撃を受けたの。身の証明の為にそれを預かっているので開示してもらわなきゃ困るのよね。あなたじゃ判断できないのなら上の偉い人に聞いてらっしゃい。」


 それを聞くと受付嬢は固まった。それはそうだろう。通常タグは、本人の身分証明の為の物だ。他人が持ち込む場合は依頼中に死んだ仲間か、無縁仏を特定する為にギルドに持ち込まれ、家族に連絡を取る為に使う。悪い奴は悪用してそこから相手の家族に難癖をつけて謝礼をせしめるのかもしてない。そうならないようにギルド側がタグの持ち込みに対しては一定額の謝礼を支払うらしい。

 間違ってもSランク冒険者(サヤーニャ)を襲って身の証明の為に渡すものではない。可能性として、襲撃者は返り討ちにされ、それだけでは腹の虫が収まらず家族の元までお礼参りに行くと邪推されても仕方がない。


 困ってる受付嬢に対し、受付奥の扉を指差して一言、助け船を出すかの様に告げる。


「あそこに居るんでしょ? ここで一番偉い人。」


 言外にギルドマスターを呼べと言ってる。自分では判断できない案件で、今この瞬間で最大武力を保持するサヤーニャ。決して怒らせたくない相手だろう。仮に他の冒険者が手を組んで対抗したとしても、彼らに勝ち目はない。

 受付嬢の取れる最善手は、上司に案件を丸投げして自分で関わりを立つことだろう。Sランク冒険者(サヤーニャ)対抗できるのはこの場での最高権力者だけだ。


 「少々お待ちください」と言い残し走るように奥の部屋に飛び込んだ受付嬢が、サヤーニャの提案を受け入れたのは、仕事上の手順なのか、それとも己の身を案じたのか分からないが。彼女の中では人生で一番の困難を処理している気分なんだろう。



と言う訳で、本日から第3章突入しました。

この章で無事にダーシャ君をおうちに返してあげたい・・・。

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