060 鉱山の街
野営地をでて4時間経過。現在時刻は10時半って所かな。そろそろ休憩を取りたいなと思ったところで声をかけられた。
「そこの丘を登り切ったら休憩しましょうかね。」
定期的に行商ではなく、旅行で使う老夫婦。さすがに慣れた道らしく、今回の休憩スポットは全て老淑女の指示通りだ。
えっちらおっちらと丘を登る事20分、目の前には新しい光景が飛び込んできた。
眼下に広がる光景は岩石で作られた周囲10kmはあろうかと言う城壁。所々から黒光りしている大砲はこれでもかと自己主張している。
城壁の中は何本もの煙突が黒煙を噴き出し、先程の大砲はきっとそこの工房で作られたのかと想像を掻き立てる。城門はここから見る限り東西南北に有り、黒煙を噴き出す工房は城門の南側にあった。鉱山からの最寄りの城門が南側なのだろう。現に俺達も南の城門目指して進んでいる。
中央には広場がある。市場が立つ日は露店がすごい事になりそうだ。そこを中心に北西は背の低い屋根が目立つ。きっと、生活居住区だろう。南東が仕事場、北西が居住区。その間の広場で商業が盛んになると。
さすが父上。良い配置の街だと思います。
城壁の周りはだだっ広い草原で、例え戦場になってもなかなか守りやすい配置である。東に目をやると、距離で2km位だろうか。森林が姿を見せる。鍛冶で使う薪はここから伐採しているのだろう。
「はっはっは、どうだ坊主、なかなかの絶景じゃろう。」
老紳士はしてやったりって顔をして俺を笑っている。まったくもって、してやられた。やられたが、悔しいと言うより凄いという感想しか出てこないのがこの街の懐の広さだろうか。5年間炭鉱に引きこもっていた俺にはとてつもない衝撃だ。
「いやー。度肝を抜かれるってこの事ですね。予想外で言葉が出なかったですよ。」
「と言う事は、今は言葉にできると?」
ニヤリと笑う老紳士に、俺もニヤリと笑い
「すっごい絶景です。」
両手をあげて、素直に負けを認めたのだ。
「あらあら、この位で絶景と言ってたら、この先の港町で迷子確定ね。」
「この位」宣言に一瞬カチンときた老紳士だが、比較対象が港町と分かると「そりゃそうじゃ」とカッカッカと笑っていた。
「それで、どうするの? ここで休憩? それとも行っちゃう?」
この丘を降りて街まで馬車で大体30分位かな。今が11時前後として、休憩すると昼飯時にはなる。
「ジーナさんが休憩と言ったんだから休憩だろう?」
「馬鹿ねぇ・・・。空気読みなさいよ。」
いきなり怒られた。
「ジーナさんが休憩と言ったのは、疲れが出る前に先にゴールを見せることで気を引き締めて動けるの。あなたが辛くないようにってジーナさんの配慮よ。それで、次のゴールが見えたあなたはどうしたいの?」
老淑女と目が合うと、嬉しそうにうなずかれた。俺の事をこんなにも考えてもらえて少し恥ずかしくなった。
老紳士を見ると、ニヤリとサムズアップで返された。
「じゃぁ、早く街に入りたい。」
「よし、まかせろ」と老紳士が手綱で馬に合図を送ると、カッポカッポと城門に向けて馬車が進むのだった。
昨日の前書きに「なろう大賞コン」に応募したと書きましたが、せっかくなので「モンスター文庫大賞」にも並行応募しました(募集要項的にOK)
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