059 あつあつ蜂蜜パン
休日なので、更新時間が遅めです。
明日もこのくらいの時間になるかもです。
そして、『なろうコン大賞』応募してみました。
空と大地の切れ目から眩しい光が差し込んできた。昨夜はあれから何もなく、むしろあの喧騒が嘘のように静かに焚き火の番をしていた。白み始めた空で鳥が目を覚まし、辺り一面から、チチチチチとかピュロロロロロロと聞こえてくる。
陽の光なのか、鳥のさえずりで目を覚ましたのか、サヤーニャと老夫婦が起きてきた。
「おはようございます。」
「はい、おはようございます。昨日は大変だったけどあれから大事なかったのかい?」
「あの騒ぎが嘘のように、静かな夜でしたよ。」
「それは良かった。それじゃぁ、今朝は少し豪華な朝ごはんを作りましょう。ダーシャ君はあの蜂蜜が気に入ったみたいだから、パンに付けて食べてもいいのよ。」
あの瞬間で好物と見透かされたらしい。サヤーニャにも突っ込まれたし、そんなに顔に出ていたのか。恥ずかしい。もう少し自分の感情をコントロール出来なくては、館に戻ってからの貴族教育が少し怖い。
「いや、でもあの蜂蜜は高価な物でしょ。」
「いいのよ。旅行用で瓶に小分けしてもってきたの。今日中に鍛冶の街に到着するから好きな人に食べてもらうのが蜂蜜も喜ぶわよ。」
パンに切込みを入れ、蜂蜜をたっぷり入れる。俺の分だけじゃなく、他のパンにも同じように蜂蜜を入れている。
「私もこの食べ方が好きなんだけど、お爺さんがもったいないって怒るのよ。だから、旅の最終日だけはいつもこうして、みんなで美味しく食べるのが私の旅の締め括りなのよ。」
焚き火でパンを焼き始めた。ついでに、簡易製のかまどで目玉焼きを4人分作り始め、朝食の準備が完了した。
1か所だけではなく、全体に焼き色が着くようにパンを回しながら焼きあげた。全てに均等な焼き目が着いた。
「さぁさぁ、みなさん。朝ごはんの準備ができましたよ。」
今回の旅程で、ずっと老淑女がご飯を作ってくれている。胃袋を満たしてくれる人が発言権を持つのは、炭鉱でも冒険者でも変わらない様だ。
アツアツのパンを頬張ると、中から蜂蜜がトロリとあふれてきた。蜂蜜の染み着いた生地はしっとり甘く、一晩見張りで着かれた胃袋に辿りついた。
「んー。この蜂蜜美味しい。ねぇ、ジーナさん。昨日もこの蜂蜜でお茶をごちそうになりましたけど、この蜂蜜本当に美味しいですよね。鉱山の街のお店で売ってるんですか?」
昨夜の話が引っ掛かってるのか、蜂蜜に興味を持っていかれているらしい。しかし、この蜂蜜が次の街で手に入るのなら、できるなら手元に置いておきたい。
「在庫があるかは分からないけど、『猫の歩廊亭』って宿屋の雑貨コーナーに置いてるのよ。」
サヤーニャの顔を見合わせ。今夜の宿は『猫の歩廊亭』に決まった。
4人でにぎやかに朝食を食べ終わると、最後の旅程に向けて出発した。




