057 襲撃者の正体
―― ザッ ザッ ザッ ザッ ・・・
暗闇の中に響く足音。2人の距離がどんどん縮まっていく。外の騒ぎが気になるのか、老夫婦も馬車の中から外の様子をうかがっている。しかし今は静寂に包まれている。先程まで戦うと意気込んでいた者たちは代表者の一挙手一投足に注意している。
お互いに武器を持ったままの話し合い。一歩間違えばそのまま殺し合いが始まる。
先程矢を放った者は、話し合いの最中は弓を番えていない。しかし何時でも攻撃態勢に移れる様に矢を手に持っている。各言う俺も、スリングショットに何もセットしていないが、協議決裂に備えて準備をしている。
一応サヤーニャの護衛対象でもある俺は、基本的に接近戦はしないようにと言い含められている。もちろん、いざって時の為に使いなれた武器は装備している。しかし、遠距離から攻撃ができるに越したことは無いと、サヤーニャから渡された武器がスリングショットだ。
先程の閃光の様に、刻印を弾にすることで、ただのパチンコが汎用性の高い武器に早変わりする。勿論、弾がただの石でも、当たり所が悪ければ普通に相手の命を奪う事が可能なので、扱いには注意する必要がある。
話し合いの声は闇夜に響く。十分離れた距離ではあるが、会話の内容は丸わかりだ。
「野営地に気配を消し、武器を持って近づいた事を詫びよう。私の名はタダム。鍛冶の街の冒険者ギルドを拠点にしている。冒険者ランクはCだ。」
意外とランクが高い。鍛冶の街の中でも上位に入るのではないだろうか。
「此方も自衛のためとはいえ、何も確認せずに反撃に移った事を詫びよう。私の名はサヤーニャ。特に拠点にしているギルドは無い。冒険者ランクはSだ。今は護衛の依頼を遂行中。」
サヤーニャの自己紹介に相手陣営がザワっとする。Sランクの冒険者は数えるほどしかいない。長年冒険者として活躍しているのなら、その凄さは俺よりも身に染みるだろう。その反応に満足したのか、サヤーニャはニヤリと微笑んでいた。
「それよりも、何で襲撃かけたのか教えてもらっていいかしら。」
野営地に気配を消し、武器を持って近づく。濁して言っているが簡単に言えば襲撃だ。それも、自分より格上の冒険者に襲撃したのだ。更にその冒険者は護衛依頼を受け野営していた。ここで盗賊と決めつけ八つ裂きにされても文句は言えない状態だ。
「改めて、襲撃をかけようとした事を詫びる。本当にすまなかった。」
重ねて頭を下げ、後ろを見ると他の仲間達も一斉に頭を下げている。
「護衛対象は怪我をしてないし。今後も彼らに手を出さないなら気にしないわよ。それで?」
何故自分達を襲ったかの理由にはならない。理由が明確に分かるまで、サヤーニャの追及が終わる事は無いだろう。「実は、旅人を襲う冒険者崩れでした」って可能性も捨てられない。彼等の身を潔癖を証明する方法は頭を下げる事ではないのだ。俺達に連行され、冒険者ギルドで所在証明はできるだろう。しかし、襲撃した事と所在証明は全く関係ないのだ。
「俺達が受けた緊急依頼に関わる事項だ。緊急の上に強制が着いているのでギルドまで同行して身の証明をする事ができない。」
襲撃しておいてこの言い草だ。悪いと思っているから詫びる。しかし緊急依頼の所為で身の証明ができない。一見筋が通っている。それは、襲撃者から見た視点での筋だ。襲われた側からすれば、彼らの緊急依頼など何の足しにもならない。
「ギルドの依頼なら仕方ないわね。身の証明は、あなた達の冒険者タグで良いわ。それで私が勝手にギルドで確認する。冒険者タグの魔素判定で私達も安心できるし。問題無ければギルドに預けておくからそれを後で回収するといいわ。定宿にしてるギルドなら顔パスで返してもらえるでしょ。例え首の無い死体になっても照合してくれるでしょうし。」
Sランク冒険者の提案を彼に拒否する権利が無かった。
先日から行っている50話記念キャラクター投票まだ続いてます。
まだ2票という寂しい状態なので、投票を心待ちにしています。
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