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月の滴  作者: あれっきーの
袖の触れあいは一期一会
43/136

043 村の守り神

出社前ぎりぎりで投稿です。





村長さん(パリーゼ・リーデル)、お久しぶりね。」


 どうやら、サヤーニャと村長は知り合いの様だ。


「おや、これはこれはサヤーニャさん。お久しぶりです。お元気でしたか。」


 屋敷から出てきた老紳士は嬉しそうに口を開いた


「お蔭さまで、ピンピンしてますよ。」


「それは何よりです。」


 うんうんと頷きながら、俺に気がついたの目を向ける。


「後ろのお方は・・・?」


「一時的な預かり弟子よ。鉱山(クバハ)から旅してるんだけど、ずっと歩きでね。ちょっと温泉で一休みしようかなと思ってね。」


「おぉ、そうでしたか。初めまして。この村の長を務めています村長(パリーゼ・リーデル)です。ゆっくり逗留は無理でしょうが、羽根を伸ばしていかれてください。」


 俺の方に体を向け、わざわざ自己紹介をしてくれた。


「ご丁寧にありがとうございます。ダーシャと申します。若輩者ですがよろしくお願いします。」


 握手を交わした。老紳士の手は見た目に反して堅く、これまでの人生は楽ではなかったとを語っていた。


「ありがとうございます。そうさせて頂きます。」


「所で、今日顔を出したのは別の理由があるんだけど。」


 挨拶はもういいだろうと、サヤーニャが口をはさむ。


「はい。私にできることであれば。」


 万屋か、村長さん(パリーゼ・リーデル)にしかできないらしいので大丈夫だろう。


「来る途中に、灰色熊(グリズリー)キツネ(リシッツァ)が獲れたの。毛皮と燻製肉をちょっと売りたいんだけど良いかしら。」


「それは素晴らしい。わざわざ燻製にまでされているということは、結構な量があるのですね。」


 結構な量と言うか、かなりの量だ。燻製にしても500kgは残っているだろう。


「えぇ、そうなの。3m級の灰色熊(グリズリー)だったから、ここまでの移動も大変だったわ。」


「ご苦労様です。さっそく万屋(マガズィーン)には顔を出すように伝えておきますよ。」


「ありがとうございます。助かります。」


「但し、この時間は旅人の相手で万屋(マガズィーン)もすぐには動けないでしょう。よろしければ先に、わが村自慢の温泉で羽根を伸ばしてください。」


「えぇ、そうさせて頂くわ。万屋さん(マガズィーン)には、日が沈んでからで良いって伝えてもらってもよろしいかしら。」


「はい。大丈夫ですよ」


 そう言うと、村長(パリーゼ・リーデル)と分かれて温泉に向かった。


「ダーシャ君は水着とか湯浴着とか持ってないよね。」


 最近まで炭鉱奴隷として働いていたので、当然そんなものは持っていない。


「さすがに無いですね。」


「それなら、そこの観光街で買わなきゃね」


 指差す先には、観光客向けの屋台が立ち並んでいる。


「この人たちは万屋(マガズィーン)とは違うのか?」


 この規模の村には、店があっても2~3件だろうと思っていた。しかし、ここは屋台だけで10件も並んでいる。さらに言うと、店番のほとんどは、10才前後の子供がしている。釣銭を誤魔化されたりしないのだろうか。


「店番の子が小さい気がするんだけど、釣銭誤魔化したりとか、犯罪発生は怖くないのだろうか。」


 俺の疑問にニヤリと笑う。


「この村はね、何もしなくても外貨を稼ぐ手段を持ってるのよ。」


「温泉だな。」


「えぇ。ここの温泉は立地条件が悪いんだけど、こんな言い伝えがあるの。」


 目を細めて謡い始めた。




― 月が降るよりはるか昔


  男は戦から逃げこの地に現れる


  人々は争いの種と石を投げた


  1人の少女が身を盾にしてかばった


  少女は男を看病し


  湯につけて心身を癒した


  傷の癒えた男は再び立ち上がった


  少女は心配でついて行った


  男は武勲を立てこの国の王となった


  しかし少女は側には居ない


  村に帰ったかと探しに来たが見つからず


  少女は村の人間ではなかった


  男の窮地に現れた少女は


  言い伝えの女神であった ―




 吟遊詩人が側にいたならリュートで曲を流してくれただろう、綺麗な声に抑揚をつけサヤーニャは古き言い伝えを教えてくれた。


「月が降る前からこの村は、この規模の村として成り立っているの。知る人ぞ知る伝説の湯治場としてね。そしてここに来る人は皆乱暴をしないの。何かしたら女神に罰を与えられるからね。」


 せっかくなので、もう一度謡ってほしいと頼んだが断られた。


「さぁさぁ、私の歌を楽しむんじゃなくて、せっかくの温泉を楽しみましょう。」


 そう言うと、近くの屋台に飛び込み、湯浴着を2人分選ぶのであった。




温泉っていいですよね。

今度の休みに入りに行きたい(遠い目

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