043 村の守り神
出社前ぎりぎりで投稿です。
「村長さん、お久しぶりね。」
どうやら、サヤーニャと村長は知り合いの様だ。
「おや、これはこれはサヤーニャさん。お久しぶりです。お元気でしたか。」
屋敷から出てきた老紳士は嬉しそうに口を開いた
「お蔭さまで、ピンピンしてますよ。」
「それは何よりです。」
うんうんと頷きながら、俺に気がついたの目を向ける。
「後ろのお方は・・・?」
「一時的な預かり弟子よ。鉱山から旅してるんだけど、ずっと歩きでね。ちょっと温泉で一休みしようかなと思ってね。」
「おぉ、そうでしたか。初めまして。この村の長を務めています村長です。ゆっくり逗留は無理でしょうが、羽根を伸ばしていかれてください。」
俺の方に体を向け、わざわざ自己紹介をしてくれた。
「ご丁寧にありがとうございます。ダーシャと申します。若輩者ですがよろしくお願いします。」
握手を交わした。老紳士の手は見た目に反して堅く、これまでの人生は楽ではなかったとを語っていた。
「ありがとうございます。そうさせて頂きます。」
「所で、今日顔を出したのは別の理由があるんだけど。」
挨拶はもういいだろうと、サヤーニャが口をはさむ。
「はい。私にできることであれば。」
万屋か、村長さんにしかできないらしいので大丈夫だろう。
「来る途中に、灰色熊とキツネが獲れたの。毛皮と燻製肉をちょっと売りたいんだけど良いかしら。」
「それは素晴らしい。わざわざ燻製にまでされているということは、結構な量があるのですね。」
結構な量と言うか、かなりの量だ。燻製にしても500kgは残っているだろう。
「えぇ、そうなの。3m級の灰色熊だったから、ここまでの移動も大変だったわ。」
「ご苦労様です。さっそく万屋には顔を出すように伝えておきますよ。」
「ありがとうございます。助かります。」
「但し、この時間は旅人の相手で万屋もすぐには動けないでしょう。よろしければ先に、わが村自慢の温泉で羽根を伸ばしてください。」
「えぇ、そうさせて頂くわ。万屋さんには、日が沈んでからで良いって伝えてもらってもよろしいかしら。」
「はい。大丈夫ですよ」
そう言うと、村長と分かれて温泉に向かった。
「ダーシャ君は水着とか湯浴着とか持ってないよね。」
最近まで炭鉱奴隷として働いていたので、当然そんなものは持っていない。
「さすがに無いですね。」
「それなら、そこの観光街で買わなきゃね」
指差す先には、観光客向けの屋台が立ち並んでいる。
「この人たちは万屋とは違うのか?」
この規模の村には、店があっても2~3件だろうと思っていた。しかし、ここは屋台だけで10件も並んでいる。さらに言うと、店番のほとんどは、10才前後の子供がしている。釣銭を誤魔化されたりしないのだろうか。
「店番の子が小さい気がするんだけど、釣銭誤魔化したりとか、犯罪発生は怖くないのだろうか。」
俺の疑問にニヤリと笑う。
「この村はね、何もしなくても外貨を稼ぐ手段を持ってるのよ。」
「温泉だな。」
「えぇ。ここの温泉は立地条件が悪いんだけど、こんな言い伝えがあるの。」
目を細めて謡い始めた。
― 月が降るよりはるか昔
男は戦から逃げこの地に現れる
人々は争いの種と石を投げた
1人の少女が身を盾にしてかばった
少女は男を看病し
湯につけて心身を癒した
傷の癒えた男は再び立ち上がった
少女は心配でついて行った
男は武勲を立てこの国の王となった
しかし少女は側には居ない
村に帰ったかと探しに来たが見つからず
少女は村の人間ではなかった
男の窮地に現れた少女は
言い伝えの女神であった ―
吟遊詩人が側にいたならリュートで曲を流してくれただろう、綺麗な声に抑揚をつけサヤーニャは古き言い伝えを教えてくれた。
「月が降る前からこの村は、この規模の村として成り立っているの。知る人ぞ知る伝説の湯治場としてね。そしてここに来る人は皆乱暴をしないの。何かしたら女神に罰を与えられるからね。」
せっかくなので、もう一度謡ってほしいと頼んだが断られた。
「さぁさぁ、私の歌を楽しむんじゃなくて、せっかくの温泉を楽しみましょう。」
そう言うと、近くの屋台に飛び込み、湯浴着を2人分選ぶのであった。
温泉っていいですよね。
今度の休みに入りに行きたい(遠い目




