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月の滴  作者: あれっきーの
炭鉱奴隷への転落
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004 幼き日の日常

 とっさに相棒を抱きしめた。


 慣れない浮遊感は、地面に衝突する恐怖をこれでもかと押しつけてくる。


 大鷲に乗って郵便配達する職業ならともかく、何年も炭鉱で生活している自分が自由落下することなど夢にも思っていなかった。


「クゥーン。」


 相棒も心細い声をだしてる。せめてこいつだけは何とかして守りたい。改めて心に誓った。


 何か柔らかい物にぶつかり、世界は白く反転した。



 あぁ、これが死後の世界か・・・。



 そう理解すると、過去の記憶を鮮明に思い出したのだった。








------


「ダーシャ。またそんなに汚して。お洗濯する身にもなってよね。」


 その声にビクリと小さい背中を跳ねさせた。

 姉代わりで女中のマーシャが、ほっぺたをプクーと膨らませてこっちを睨んでいる。


「ごめんね、マーシャ。汚すつもりはなかったんだよ。」


 マーシャの仕事を増やしたことを謝りつつ、彼女の顔色を覗った。


「そうだ、マーシャ。今日、父上が視察から帰ってくるんだ。お土産においしいお菓子を買ってきてくれる約束をしてるから、お詫びに半分にして一緒に食べよう。」


 最高の謝罪の気持ちを伝え、大好きな姉に許しを請う。


「いいわよ。そんなに怒ってないから。毎日怒ってもダーシャはちっとも反省してくれないし。それに、ダーシャの洞窟探検は誰にも止めることはできないでしょ?それこそ心酔してる父上に止められても無理なんじゃない?」


 笑いながら許してくれた姉は、さも当然のように明日も服を汚すダーシャを想像していた。


「そんなことないよ。父上が止めたらさすがに止めるさ!!」


 父の言葉に逆らうことは絶対にしない。なぜなら、尊敬してる父の言うことは間違いがないからだ。


「じゃぁ、私が言っても止めないのはなぜなの?」


 意地悪な笑顔を向けられ、二の句が継げなくなってしまった。


「うそうそ。ごめんねダーシャ。あなたが可愛いからついつい意地悪言っちゃったの。」


 直後に抱きしめられ、今日もしてやられた感いっぱいになってしまった。


「マーシャは意地悪だ。」


「ごめんってば。」


2人は見つめ合い、どちらからともなくクスクスと笑いあった。


「それより、ダーシャ。領主様がお戻りになる前に、お迎えの準備するって言ってなかった?」


「もうそんな時間!?いけない、マーシャまたね!!」


 慌てて自室に駆けていった。

 

「もう、ダーシャ。慌てて転ばないのよ。」


 振り向きもせずに走っていく姿を見送りながらも、心配することは忘れないマーシャであった。


 こんな泥だらけの服で父上のお出迎えなどできるわけがない。清潔な子爵家の正装に着替えて準備しなくてはならない。


 全力で走った挙句、当然のように大地にキスをする結果に終わったのだ。




 顔の泥を落とし、正装に着替えた後は、母上と一緒に父上の到着を待つだけだ。


 母上も久しぶりに会うのはうれしそうで、金色の髪をいつもより丁寧に馬の毛のブラシで梳いている。普段つけないイヤリングやネックレッスもしているのは、「大好きな人に会うときは、綺麗な姿で会いたいから。」と前に父上が視察から帰ってくるときに内緒で教えてもらった。


「母上。街道に馬車が見えたよ。きっと父上の馬車だよ!」


 丘の上から一望できる街に唯一つながる道を、土煙を上げて1台の馬車がパカランパカランと軽快に進んでいる。

 遠目ではっきりとは見えないが、御者はセルゲイで間違いないと思う。

 なんといってもあの特徴的な髭はこんなに離れたところからでも自己主張を忘れていない。


「あら、もうそんな所まで戻られたのね。急いで用意を済ませなきゃ。」


そう言うと、鏡の前に置いてあるベルを鳴らした。


「マーシャ! マーシャ! あの人がもうすぐ戻ってくるわ。他の子達にも急いで玄関前に並ぶように伝えて頂戴。」


「はい。奥様。かしこまりました。」


 ドアの向こうから返事をすると、気配を廊下の方へと消していった。


「さぁ、ダーシャもボタンを閉じて、お迎えに行きましょう。」


 母に促されてボタンを閉じ、手をつないで玄関に向かったのだ。




前回の区切りが良くなかった(ぐぎぎぎぎぎぎ)


こうして人間成長していくと、生温かく見守ってください。

そのうちうまいこと処理します。

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