038 初めての獲物
今回は血生臭い表現が含まれております。苦手な人は明日の前書きであらすじ突っ込むので、それまでお待ちください。
平気な人はいつも通りご賞味くださいませ。
相棒の入浴も終わり、3人で朝食を取るとさっそく移動を開始した。
「次の目的地までどの位距離があるんだ?」
「今日は狩りに時間を使うから、移動だけなら4時間位かな。」
時速5kmで考えても20kmはありそうだ。中間距離で狩りをすると言ってたから、なかなかの長丁場になりそうだ。
昼の休憩と火を起こした。昨日習った通りに無事焚き火を組むことができた。
「おっ。ちゃんと1人でできたね。エライエライ。」
「無事にできてほっとしてるよ。」
本当なら、朝自分で火を起こして風呂を沸かす予定だったのだ。復習ができていないから不安だったが、魔素の動きをきちんと観察することができた。
火が大きくなってきたので、鍋に水・ジャガイモ・人参・玉ねぎ・ビーツ・にんにく・トマトペーストに乾燥させた鳥ガラを入れ、くつくつと煮込み始めた。荷物から何か肉っ気が欲しいなと漁っていると、相棒がいきなり低い声で呻り始めた。
「ぐるるぅぅぅぅぅぅ!!」
視線を追いかけると、そこには全長2mはあろうかという大きな灰色熊が此方を覗っていた。
「血の匂いで集まるとは聞いてたけど、狩る前に集まるとは聞いてないぞ!」
「予想より少し早かったわね。でも、向こうには向こうの都合ってものもあるわよ。」
お互いに様子見をするかのように睨みあっている。
「で、どうするんだ?」
「まずはダーシャ君がどれだけ動けるか見てみたいから、行ってもらっていい?」
笑顔で死の宣告を告げた。
相手は灰色熊だ。旧時代のハンターが鉄砲を使って分の悪い戦いをしていたのに、ツルハシで戦いを挑むのは自殺しに行くのと同意語だろう。
「無理っ!」
「返事が早いわよ。若い男の子は、綺麗な女性を守る位言えないでどうするのよ。」
いや、無理でしょ。俺が行ったところで、5秒でミンチの完成だろう。さっきの鍋に入れたらおいしいボルシチの出来上がりだ。
「熟考したけど、やっぱり無理!!」
「仕方ないわねぇ。ダーシャ君には、まだ少し早かったかしら。」
残念そうに言うや否や灰色熊に向かって、まるで近所まで買い物に出かけるかの様にテクテクと歩いて行った。
「サヤーニャ! 無理だ、逃げろ!」
次の瞬間、サヤーニャの体がブレたかと思うと灰色熊の首が消えた。
消えた首はサヤーニャの左手で鷲掴みにされており、頭を失った体はドスンと倒れた。
「えっ?」
今の一瞬で行われた怪奇現象を頭が理解してくれない。
「しゅーりょー。」
笑顔で切断された熊の首から股間まで刃を入れると、慣れた手つきで毛皮を剥ぎ始めている。
「ん? ダーシャ君どうしたの? もう狩りは終わったよ。」
茫然と見ていると、当たり前のように告げられた。いや、知ってますから。
「ボルシチには、新鮮で美味しい部位を入れようね。」
切り取ったばかりの肉を食べやすいサイズに切り刻んで鍋の中にドポドポと投入して行く。相棒の為にも左手の毛皮をはぎとり、「ここに蜂蜜味が染みて美味しいんだよ」と嬉しそうに教えていた。
「この位のサイズだと村の人たちも喜んでくれるかな。」
嬉しそうに毛皮を広げ笑う彼女の手は、灰色熊返り血で真っ赤に染まっていた。
できる人ができない人の気持ちで考えるのは結構難しみたいですよね。
私もグリズリー開いてだと、逃げの一手を取りたいと思います(そして食べられる




