033 久しぶりの自由
新章スタートです
街を後にして3時間。そろそろお昼休憩を取ろうかと手ごろな切り株に座り水筒の中身をあおった。多少日持ちがする様にと|ライムネード《水に塩とライム皮の日干しを入れた物》が入っている。
「進路はこっちであってるのか?」
サヤーニャお手製の地図を広げながら現在地の確認をする。今の世の中では正確な地図の販売はかなり取り締まわれている。うちの領地も地図の販売はご法度である。しかし、旅人が道に迷わないようにと、地域毎にざっくり作られた白地図の販売はある程度許されている。
このサヤーニャお手製の地図はその白地図に事細かに情報を記載しており、地形・動物分布・植物分布・鉱物分布等1か所に付き数枚ある。聞いた話では、うちの領地だけで300枚近い地図を持っているらしい。
地図をいまいち読めないので、逐一確認するのが大事だ。
「途中で分かれ道がるけど、基本的に大きな道を選んでいたら大丈夫よ。」
近所に住む農村や狩人の家に続く道が脇道として分岐しているみたいだ。
「途中で危険な所があるとか?」
この旅の重要任務の一つでもある炭鉱責任者に頼まれた輸送は確実にしなきゃいけない。なんといっても、俺にとっての『月の滴』は、炭鉱奴隷から解放されるための借金返済その物と言っても過言ではない。
何よりも、大手を振って家に帰るためにはこれを紛失などできない。
「盗賊で危険なのは魔法の街~港町位かな。後は大物を拾っても売りさばくルートが無い雑魚よ。」
「ってことは、最初の村まで危険は無いってことか」
少しだけ緊張が緩んだ。
「私がいるから、ご自宅まで危険は無いよ。大船に乗った気で居なさい。」
「わふ!」
「そうだな、2人が居れば大丈夫だな。」
安心して進む。そうだ、この2人が居れば大丈夫だな。バディは言わずもがなオオカミとして身体能力は高いし、サヤーニャもこの前の剣捌きなら何があっても大丈夫だ。
色々あって全部自分で抱え込む癖が付いているが、任せれる所は任せて、俺は俺で家まで確実に返ろう。
途中で見つける薬草の説明や、動物の生態などを習いながら歩き続けると、日が傾き始めた。
「そろそろ今日の野営地ね。薪を拾いながら場所を確保しましょう。」
今日の野営ポイントはこの先にある湖畔らしい。水と薪に困らなければ食料は日持ちするものを持っているので安心して休むことができる。
小川の畔に向かう途中、皆で薪拾いをした。相棒に付けてる背負籠にたっぷり詰め込んだが、よろけることもなる湖畔まで運んでくれた。
湖畔にターフを張り、水場の確保が完了。焚き火をつけて野営準備完了した。
相棒とサヤーニャは水の中に潜り、魚を手づかみしている。俺はそんな事ができないので、岸辺から釣り糸を垂らして今夜のご飯を確保している。
相棒が3匹、サヤーニャが5匹、俺が0匹という情けない釣果だった。いや、初めての釣りだし仕方がないと思おう。
「ダーシャ君残念だったね。せっかくだからいい事を教えてあげるわ。釣りは糸だけじゃなくて、針と餌も付けなきゃ駄目なんだよ。」
は・・・初めての釣りだから仕方ないよね・・・。むしろ知ってたなら先に教えて欲しかったです。
キャンプに行きたくなった・・・。
もふもふしながら寝たいとです。




