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月の滴  作者: あれっきーの
炭鉱奴隷への転落
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032 鉱山からの解放

雨にも負けず、風にも負けず、睡魔にも負けずの投稿(キリッ



「いよいよもって、今日でお別れだな。」


―あれから、更に1週間がたった―


 通常の倍も魔素中毒で療養していた理由は単純で、僕の体内にあった魔素が通常よりも多かった。サヤーニャ謹製魔具による測定結果で、本人からも「これは推測になるのですが」と、前置き付きの診断結果は


 ①この前測定した時に検出された体内魔素濃度は、常人の15倍あった。


 ②魔素は特定時間で大幅に減少するタイミングがある。


 ③昨日現在の体内魔素濃度は常人の3倍ある(血統によるものと自己完結)。


 ④この結果から、少なくとも通常の100倍濃度の魔素に侵されていた可能性がある。


 それは確かに測定したら固まるな。自分の理解の範疇を超える結果は魔具の不具合を疑いたくなるよな。


 あの後数度に渡り測定したが、値の変動は計算通りだったらしく、魔具の不具合ではなく、魔素濃度異常の可能性で決まりだろうって流れになった。


 俺としては動ければいいんだけどね。2週間ベットから出れないのは色々と辛かった。


 あの後を振り返ると、ツルハシを磨いてるときにサヤーニャが相棒(バディ)と初遭遇してしばらく見つめ合った後、悲鳴をあげてた。


 Sランク冒険者なのにオオカミを怖がるのかと思いきや、愛らしい毛皮の塊に感極まったらしい。


 その悲鳴を聞いて、看護婦(ミエトスィストラー)が「ダーシャ君駄目です!!」って叫びながら部屋に駆けこみ、元髭もじゃ(ユーリー)を始めとした炭鉱の男衆が部屋に雪崩れこんできた。


 何が駄目なのかを聞いたところ「知りません!」って怒られた。おっさん共はニヤニヤ笑いながらこっちを見ていた。今思い出しても理不尽な扱いだ。


 重大な方で言うと炭鉱責任者(コバタロー)に発掘した『月の滴』も領主(父上)に届けて欲しいと依頼された。普通の輸送で盗賊に襲われる可能性を考慮したときに、Sランク冒険者(サヤーニャ)が護衛についてる俺に任せた方が安全らしい。


 たしか、Aランク冒険者が軍の1個中隊に相当する火力を持っていると聞いたことがあるので、Sランク冒険者なら単純計算でその数倍の火力。実際に腐ったオッサン(警備主任)の腕を斬り落とした腕前を目の当たりにしてるので、彼女(サヤーニャ)の腕は信用できる。


 最初の目的地は鍛冶の街(キゼル)。ここから馬車で約1週間。徒歩なのでその3倍は見ておいた方がいいだろう。食料は途中の農村や狩りをしてすれば何とかなるだろうが水だけは1樽リヤカーに詰め込んだ。


「本当は坊主に馬車を用意してやりたかったんだがな。」


 残念ながら、鉱山に1台しかない馬車は残念なオッサン(警備主任)を囚人として輸送するため、あの事件の後に炭鉱を出発している。戻ってくるまで後1週間はかかるだろう。待ち時間を考えると徒歩で着くのと大差ない気がしたので、歩いて行くことにしたのだ。


「いや、大丈夫だよ。せっかくの機会なんだし、自分の見聞を広げてくるよ。」


 10歳の頃から炭鉱に引きこもっていたので、世間を良く知らない。否、一般的世間を良く知らない。労働階級や奴隷階級の扱いは5年も受けてきたのでそっちはばっちりだ。父上の視察ではないが、自分の目で見て、肌で感じ、それを政策に生かすのが大事だ。


「じゃぁ、みんな! 今までお世話になりました。」


 炭鉱の門をくぐり抜け、振り返ると最後の挨拶をした。


「おう。今度は上手い物でも持って遊びに来てくれや。」


「病み上がりなので、無理しないでくださいね。」


「ユーリーもミエトスィストラーもお元気で。」


 改めて手を振った。


「こんにゃろ、やっと俺の名前を呼びやがったな。次来る時はいい酒も持ってこいよ。あばよ未来の領主殿!」


 ガハハと笑いながら手を振りあった。劣悪な環境ではあったが、人間環境は最高だったな。今後領主として引き継いだ場合にどのように環境整備するかは最初の課題にしよう。


 こうして、僕の炭鉱生活は終わりを告げ、懐かしの我が家へと向け旅だったのだ。




これにてひとまず炭鉱編終了となります。

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