021 夢のつづき
寝坊したので、今日は短めです・・・。
夏の日差しの所為にする私を許してください。
「坊主・・・ おい! 坊主 起きろ!!」
「うぅーん・・・。 髭もじゃ。 もうちょっと静かにして。」
「誰が髭もじゃだ!」
耳元で喚かれ、仕方がなく目を開ける。
「あれ、ここは・・・。」
「おいおい、しっかりしろよ。お前は炭鉱から救い出されて、医務室に運ばれたんだよ。」
白衣を着た男 ―名前は知らないが、たしか医者― がこっちを覗きこんでいる。
「ほら、これが何本に見える?」
指を差し出し、それに答える。そうこうしている内に入口の向こうから地響きがこっちに向かってきた。
「坊主!! 目が覚めたった本当か!!?」
暑苦しくて、声のでかい、同室のおっさんが飛び込んできた。
「髭もじゃ・・・。」
その声は髭もじゃで間違いなかった。しかしその頬はこけていて、まるで人が変わったかの様に憔悴していた。
「ごめん・・・髭もじゃ。心配かけた。そんなやつれるほど、俺、寝込んでた?」
髭もじゃの目には涙が浮かんでいた。
「いや、君が生き埋めになってからは5時間。ここに運び込まれてからは1時間だ。さらに言うと、監督は痩せてなんていないよ。」
「誰が髭もじゃだ。懐かしい呼び方しやがって。お前がもじゃもじゃ言うから切ったのはもう何年も前の話だ。」
そう言うと、元髭もじゃは俺にスープを注いでくれた。空っぽの胃袋に流れ込む熱い液体が、俺の意識を覚醒させていく。
さっき見ていた夢の中での顔と比較して痩せて見えたのは、髭が無くなっていたからだ。
冷静になった俺は、現状を確認した。
「えっと。今はどんな状況になっているか、教えてもらってもいいかな?」
「あぁ、任せろ。まずは崩落が起きた所から話そうかな。」
自分用に注いだスープを飲みながら元髭もじゃはじっくりと説明を始めた。
「だが、その前の一つ言わせてくれ。」
いきなり脱線か。だがいい。心配かけたのは俺なので文句を言えない。
「おめでとう、ダーリヤ・ダニイル・グリエフ卿。あなたの借金はすべて返済された。」
悪戯が成功させた顔でにっこり笑う元髭もじゃは、相変わらず獲物を見つけた山賊の顔に見えた。




