126 メイドさんの潜在能力
フォリシアと握手を交わすし改めて部屋の中を見る。この汚れ切った状態のまま密封棚を開けたら、この棚の将来は明るくないだろうな。仕方が無い、先に掃除を頼むか。
「執事さん、仕事を増やして申し訳ないんだけど、この部屋の掃除をお願いしていいかな?」
この屋敷の侍従長をしている彼に頼めば、たいていの無茶はその日のうちに何とかなる。部屋の掃除も今日中には片付くだろう。
「かしこまりました。恐れながらダーシャ様、このお部屋はこれから使われる予定ではなかったのですか?」
父上の前からその理由で立ち去ったので気になるのだろう。
「うん、その予定だったんだけどね。さすがにこの状態で作業は厳しいでしょ。ごめんね。俺があの時『俺が居ない時は立ち入り禁止』って言ってたから誰も入れなかったんでしょ?」
その言葉さえなければこの部屋は綺麗だったと思う。いや、間違いなく塵一つ落ちていない綺麗な部屋だったに違いない。つまりこの部屋の埃は俺の責任である。
「そのお言葉痛み入ります。確かにこのお部屋は5年間手付かずのままです。しかしダーシャ様がお戻りになった段階でこのお部屋の掃除許可を頂いていればお待たせすることはありませんでした。早速これよりハウスキーパー一同で一斉清掃に入らせて頂きます。」
そう言うが速いか、懐から取り出した銀筒の笛 ―― 人の耳には聞こえない ―― を吹くと文字通り家中のハウスキーパーを呼び出した。呼んでから全員集合するまでの時間が1分以内。庭から全力疾走した者も居るが汗一つかかず涼しい顔をしている。
「いいですか皆さん? これよりダーシャ様工房の大掃除を行います。では、かかれ!」
その号令を合図に、集まったハウスキーパー達は一言も発せずに己がすることをしていた。あるものは天井から床まで埃をおとす、別の者は入り口から壁までの埃を集める、そしてナーシャは全ての埃を纏め、塵取りに納めていく。無言でいながら完璧な連携に思わず関心してしまう。騎士団ですらここまでの連携はお目にかかれないだろう。うちのメイドさんの潜在能力は彼らの追随を許さないのか。
「ダーシャ様、まことに申し訳ないなのですが、このペースで掃除を行っても多少のお時間を頂く必要があります。そろそろお昼時でもありますし、よろしければその間にお食事を取られてはいかがでしょうか?」
意識を奪われているときに不意に話しかけられ思わず体がビクリと反応してしまう。
「ああ、判った。」
執事の進言を素直に受け入れ、フォリシアと一緒に昼食を取るため食堂に向かうことにした。フォリシアも一糸乱れぬ連携作業に見入ってた為、俺と同じようにビクリと肩を動かしたのには思わず笑みがこぼれた。




