123 家庭教師登場
父上ならきっとアレを持っているはずだと疑わずに、執務室へと急いだ。
―トントントン
「父上、失礼します。」
「開いてるよ。」
良かった。これで目的5割は達成したも同然だ。
「失礼します。父上に相談したいことがあります。」
部屋に入ると、父上と向かい合うように見知らぬ女性が座っていた。
「すいません、来客中でしたか。」
俺の方を振り返り、クスリと笑う女性。年は俺より上だろうか。少し癖毛のあるブロンドのセミロングに少し足りない位の長さ。小麦色の肌から考えるとなかなか珍しい髪の色だ。全体的に落ち着いた知性あるオリエンタルな雰囲気をかもし出している。執務関係で王宮から来られた人だろう。
「お昼を食べてからで良いかと思っていたけど丁度良いから紹介するよ。」
そういえば、紹介したい人がいるから昼飯を食べたら来るように言われていたな。朝からのドタバタですっかり忘れていた。
「紹介しよう。今日からダーシャの家庭教師をお願いした『フォーリシア・フェルナント』君だ。」
「初めまして、ダーシャ様。家庭教師という分不相応の職に付かせていただきましたが、誠心誠意頑張りますのでよろしくお願いします。」
父上の紹介を受け、椅子から立ち上がりこちらを向いて自己紹介をしてくれた。顔のつくりから察するに、アジア系と欧州系の血が混ざっているのだろう。髪の色も納得できる。陽の光に反射した薄紫色の瞳が印象的だ。身長は160cm位かな? 辛うじて俺の方が高い。それにしてもてっきり政治関係の人かと思ったら、まさか家庭教師とは予想が外れてしまった。
「初めまして。こちらこそ最近炭鉱から戻ってきたばかりの学の無い若輩者なので、ご指導よろしくお願いします。」
慣れない言い回しだったが、舌を噛まずになんとか言えた。こういうときはきちんと挨拶しておかなければ、第一印象を少しでも良い方向に持っていかなきゃ人間関係を修復するのが大変だからね。
「それで、ダーシャの用事はなんだったんだ?」
そうだ、俺の目的を忘れるところだった
「俺の使ってた『魔素水』は確か父上が保管されてたと記憶してたのですが。母上の課題で試したいことがあるので貰いにきました。」
『魔素水』とは文字通り魔素の溶け出した水の事でだ。刻印に魔素を通す時には必ずこの水で刻印をなぞらなくては、力を発することが無い。刻印に魔素が吹き込まれることで、初めて刻印として力を発揮するのだ。『魔素水』が無くても刻印を発動させるには、正真正銘の魔術を使う必要がある。
「ダーシャが使ってた棚にそのまま残してるよ。後で持っていくと良いよ。」
「はい。ありがとうございます。」
返事をするや否や、挨拶もそこそこに俺は懐かしの自分の工房向かって駆け出した。
~~~ 蛇足 ~~~
作中に出てきた『フォーリシア』さんは、偉大な作家の卵であらせらる
『音無 陽音』先生の作品『Life of Shard』の登場人物です。
折りしも今日は、『Life of Shard 改稿版』の公開日なのです
あちらで私を登場させて頂いたこともあり、そのお礼として登場
あと、今月は日刊するって言われていたので楽しみにしてください。
URLはこちらです。
http://ncode.syosetu.com/n2772ck/
(よし、ハードルあげることに成功したぞ。任務達成だね。)




