117 メイドさんの朝のお仕事
「――――。!」
声にならない奇声を上げて目を覚ました。
やばい! 寝過ごした。
顔に差し込んだ陽光で目をさました。やばい。これは絶対に警備主任にいびられる! ああー、何で今日に限って相棒は起こしてくれなかったんだろう。慌ててベットから飛び降りた降りた。
「あれ・・・?」
現状を再認識した。
そうだ。もう炭鉱じゃなかったんだ。奴隷から開放されてしばらく経つと言うのに、この焦燥感は嫌なものだ。
辺りを見回すと、相棒はソファの上で腹を上にして、涎をたらしながら気持ちよさそうに寝ていた。今の姿では、その昔『皇帝竜」を倒したと言う話を素直に信じれないな。
現実逃避で机に目をやると、昨晩完成させた母の課題がある。早速親方のところに持っていって形にしてもらおう。
いびきを掻いてる相棒を横目に服を着替えると、設計図を丸め早速部屋から飛び出た。
「っと、おはよう。」
吃驚した。部屋を出たら目の前にマーシャが居た。料理を乗せたワゴンを押して丁度部屋の前に到着したのだろう。この時間まで寝ていた俺とは違い、朝から屋敷の仕事をしてい料理を運んでくれたのか。なんと言うか、メイドの鑑だね。
「おはよう、ダーシャ。そんなに慌ててどうしたの?」
俺とは対照的に、ゆっくりとした挨拶を返された。
「親方のところにこれを作ってもらいに行こうと思ってね。」
さっき丸めた設計図を広げて見せ用途する。
「よくわからないから見せてくれなくていいわ。バディちゃんとお話できる魔道具よね。楽しみにしてるわ。」
いや、何故魔道具と決め付ける……。まぁいいか。
「じゃぁ、いって……。」
「待ちなさい。」
横を通り抜けようとしたら、いきなり襟首を掴まれた。
「次期領主が廊下を走らない。それと、外出する前に食堂に行って朝食を食べてしまって頂戴。ダーシャの分が残ってて片付かないのよ。」
「ああ、ごめんなさい。」
うん、やっぱりマーシャには叶わない。っていうか、そのワゴンに乗っているご飯は俺のじゃないのか?
俺の視線に気づかず、部屋に入っていく。
「はい、バディちゃん、朝ですよー。美味しい美味しいご飯のお届けですよー。」
なんだろう、俺は食堂なのに、相棒は配達なのか。俺と相棒で扱いが違うのは気のせいだろうか? あれ、おかしいなぁ。目から液体がこぼれてくる。
そんな俺に哀れみの目を向けながら、マーシャに起こされた相棒は、同じくマーシャが差し出す肉の塊を美味しそうにほうばっていた。




