114 課題
母上の無理難題以外に、父上からも旅立つための条件を言い渡された。どれも自分に足りていないことで、相棒もそれを理解してくれた。
父上の出した条件は3つ、それぞれ旅をするうえで必要な事だった。
まずは生きて行くために必要な狩猟を含める戦闘訓練を行うこと。いわゆる駆け出し冒険者から中級冒険者の間に覚えれる内容だ。
次に地域情勢の学習。通常の貴族なら10歳になると同時に習い始める事だ。各領地の特産物や名所とその領地の有力貴族と力関係。必要であればその町の名士とその生い立ちや人間関係と幅広く覚えなくてはいけない。
そして最後に魔法技術の習得だ。それには当然刻印技術も含まれる。これに関しては、俺も必要と感じている。今俺にできるのは種火を起こすことだけだ。4属性の操作に加えて、道具に付加する方法。何より覚えたいのは、グリエフ家の代名詞と言われる転移魔術だ。
転移魔術は昨日初めて体験したが、あの距離を一瞬で移動することができるすばらしい魔術だ。出発するまでに使えるようになるかは不明だが、小さなことでも覚えておけばいざという時の役には立つだろう。生き物は無理でも、手紙を遅れるようになればナーシャも心配しないだろうしね。
そして今は部屋で母上の宿題を作っている。
母上の要望は「私もお話したい」である。つまり、相棒と意思の疎通が取れればよいのだ。幸い、相棒は俺達の言ってることが判る。つまり、後は母上に相棒の意思を伝えれば解決だ。
最初は紙に書いていたが、長期間使うのであれば別の素材にしたほうが良いだろうと気がついたのは2時間が経過した後だった。素材に関しては、明日親方達に相談しようと決めて、夕飯を食べにリビングに下りた。
夕飯後も母上とナーシャは、相棒と一緒に暖炉の前に座り、櫛で梳いてあげたり、肉球をぷにぷにさわりまくると自分達の欲望を満たしていた。初めて相棒が伝える言葉が『うっとおしい』じゃなければ良いんだけどな。
相棒が母上達に捕まっている間、風呂に入りさっぱりすると、一緒に部屋に戻り初代グリエフ候の手記を読み始めた。まだ最初の数ページしか読んでいないが地球の相棒を褒め称える文章が目立っていた。
「なぁ、相棒。結局地球の相棒って何なんだ?」
多少読んだ位では理解が追いつかないので、相棒に尋ねた。




