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月の滴  作者: あれっきーの
これからの事
104/136

104 教会の意思

104



 食堂に着くと、父を始めとした屋敷中の人間が集まっていた。来賓の枢機卿も既に食事を楽しまれているようだ。あれ? 枢機卿ってあんなに髪の毛があったっけ?


「おぉ、着たな。うん、正礼服(モーニングコート)が良く似合う年になったね。」


「本当。小さい頃は準礼服(タキシード)しか着なかったけど、正礼服(モーニングコート)も素敵よ。」


 親馬鹿2人は、ウンウンと頷き合っている。


「やぁ、ダーリヤ君。今回はなかなか大変な目にあったね。おかげで僕も急遽繰り上げ昇進とりました。こうして会うのは初めてですが、あの時私も傍聴席で拝見していました。」


 違和感の原因は、枢機卿が代替わりしていた所為らしい。冤罪事件の後始末でお互いの位置を探るためのパーティーなのだろうか? 彼の出席した理由がいまいち掴めない。


「さすがに冤罪とはいえ、幼いながらも自分の領地を切り盛りしている天才領主を有罪判決したんですよ。何もしなければ、教会狩りが行われても不思議じゃないですからね。」


「いやいや、あの判決が無ければ、混乱期(月が降った直後)の戦争に発展しかねないですからね。あれはしょうがないですよ。」


 ハハハとウィットに富んだジョークを呟く。まったくもって冗談になっていない。


 過去、中世と言われる、文明度が今とそんなに変わらない時代に、魔法を使える人間を魔女と称して無残に人間狩りをした時期があった。その旗印となったのが教会だ。その教会が冤罪を犯して貴族(魔女の系譜)に何かをしたら、全ての貴族(魔女の系譜)が一丸となって教会排斥運動を武力行使で行う事もありえる。


 そして、混乱期(月が降った直後)は、生き残り魔女の血統である今の貴族(魔女の系譜)と治安維持部隊と称した教会の退魔士(エクソシスト)と長期に渡る戦争が起きたのだ。もちろん勝ったのは貴族(魔女の系譜)であり、教会は魔女を認める事と引き換えにその存続を許されているに過ぎない。


「先代は、例の代官さんと癒着してたらしいのです。教会のスキャンダルなので、内緒にしててくださいね。」


「もちろん、彼の責任を教会の所為にするつもりはありませんよ。ただし、ウチの息子が5年という短くない期間投獄されたお詫びは期待していますよ。」


 笑いながら内部情報を漏洩しているが、『全てぶちまけるので叩くなら教会ではなく前枢機卿を叩いてください』と言ってるようにしか聞こえない。そもそも、急な招待に参加理由はそれだろう。教会のミスではなく、個人のミスだった。突っ込もうと思えば、教会の人間が任期中にミスをしているので教会の責任と糾弾することも可能だろう。しかし、父上はそれを是としなかった。否、それにつけこんで何か有利な情報を引っ張り出すつもりだろ。相手を逃がさないように十重二十重に相手を誘導している。


 軽口を交わしながら談笑していると、コック(ジラーノフ)が前菜を運んでくれた。

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