103 心のやり場
寒くなったので執筆時間を早朝から夜に変更しています。
睡魔に襲われているため、誤字脱字もあると思いますので
発見されたらご一報いただけると随時修正させていただきます。
「いつまでも床と遊んでないで、さっさと行くわよ。」
傷づいた俺の心に塩を塗り込むかのごとく、俺の腕を掴むと起こされた。起こされる直前に前かがみ状態になった所為で、胸元とか太ももの辺りが見えそうだったが、新しい悪戯の罠な可能性が高いのであえて見ないようにした。
俺だって年頃の男なので、正直色々なことに興味がある。しかし、マーシャがそんな隙を見せるとは思えないので、全てにおいて罠を疑う必要があるのだ。
現に、俺が何も反応を見せないで居ることに対して、若干残念そうな雰囲気をかもし出している。決して気がつかなかったことにしておこう。
「正礼服を着て、パーティーの主役と言うのは判ったけど、お昼の夕方だろ? 一体何人来るんだ?」
父の転移魔法を使えば、最悪魔力が尽きるまで人を運ぶことができる。それこそ、転移空間を開いていればいいだけなので、街1つ分の人口の出入りをしようと思えばできるはずだ。ただし、その後長期にわたり魔術が使えなくなるのでさすがにそんなことはしないと思う。ちょっと遠方の身内辺りなら迎えに行ってそうな気もしないではないのだが。
「基本的に、お屋敷にいらっしゃる方だけですよ。」
指を折って数えていたが、家族と使用人を含めて10人前後って所だろうか。俺が居ない間に増えた使用人に関しては、正式に紹介を受けてないので顔と名前が一致していない。
「枢機卿様だけはお時間の都合がついたので、正式に招待すると言われてましたけどね。」
「そうか。判った。」
枢機卿か。確かあの裁判の日に、裁判官をしてた人だ。彼を迎えることで、あの事件が冤罪であったと暗に世間に広めるのだろう。
「略式パーティーなんだろ?」
「はい。基本身内だけということも有りますが、準備期間が半日と通常ではありえないので、枢機卿様には申し訳ありませんが、略式のパーティーとさせて頂きました。」
料理が寂しいため、主役が正礼服を着てバランスと取るのだろう。こういうときは、炭鉱のおっさん達の方が気を使わなくて楽だったな。
「そうだ、サヤーニャも参加するんだろ?」
領主邸についてから、なぜか別行動を取っていたので、洞窟に行く前から姿を見ていない。
「はい、あのお方もご出席されるそうですよ。」
俺の言葉になぜか口を尖らせて返事が返ってきた。
「何でそんなに棘があるんだ?」
いきなり機嫌を損ねられるのは気分が良くない。俺が知らないところで女同士の揉め事が合ったのだろうか。
「あ、すいません。あのお方が嫌いという訳ではないのですが・・・。」
少し考えた後、ため息をついて話を続けた。
「ダーシャ様護衛のご依頼を受けていただいてから数年もの間、あのお方は何も動いて頂けませんでした。差し出がましいようですが何度か催促のご連絡も差し上げたのですがなしの礫です。それが久しぶりに現れたと思えば、ダーシャが一緒に帰ってきたでしょ。どういう風に対応していいか気持ちの整理がついてないのよ。」
「そうか、判った。食堂に着くまで、マーシャに鉱山から領主の街までの旅路を教えるよ。」
マーシャの機嫌を取るわけでもないのだが、俺の窮地を何度も救ってくれたのは彼女だ。この2人にすれ違いからの仲違いして欲しくは無いので、宣言どおりに食堂に着くまでの間、今回の代官撃退劇の詳細を包み隠さず話すのだった。




