101 天下御免の姉メイド
お久しぶりです。
2週間リフレッシュしていました。
途中いただいた感想に頭を殴られたような衝撃を受けて、リテイクも同時に進行しています。
リテイク版を先にあげようと思いましたが、それはそれ、これはこれといいう事で本編再開です。
日刊ペースが維持できるかは、実生活と相談になるのでご了承くださいませ。
洞窟から戻ると、俺達を出迎える母達の姿があった。玄関ホールで本日2度目の盛大な抱擁はうれしくもあり、恥ずかしくもあった。マーシャはそんな俺の困った顔を見てはクスクスと笑っている。
「うん。本当にダーシャが帰ってきたのね。」
「ええ、奥様。先ほどから何度もそう申し上げています。」
感極まっている母とは対照的に、マーシャは冷静だ。
「さぁ、積もる話はパーティーまで取っておいて、ダーシャ様は早く旅の汚れを落としてきてください。バディちゃんもオメカシしなきゃいけないのでコチラにきなさい。」
有無を言わせぬ口調に俺と相棒はおとなしく従った。相棒はマーシャに連れられて馬用の洗い場に、俺は旅の疲れを取るため風呂に向かった。
脱衣所で服を脱ぎ散らかすと、早速汚れを洗い流す。手早く体を洗い終わると、頭にタオルを置いて湯船に浸かった。久しぶりに浸かる我が家の風呂は、相変わらず素晴らしい。
我が家のお風呂はちょっとした物だ。遠く日本の伝統的な檜風呂という風呂らしい。屋外に添えつけてあるボイラーで湯を沸かし、屋敷中を通ってい配管を通っていつでも好きなだけお湯を出すことができる。冬は凍結しないように、いたるところある蛇口はすべて開けっ放しになる。
そのお湯もリサイクル用にボイラー室につながる配管で帰っていくので、無駄な水は出ない。もちろん、下水もきちんと整備してあるので、衛生面も問題なしである。
十分体を伸ばしてくつろぎながら、窓から望める山を眺める。あの山の麓にある洞窟が俺と相棒の始まりの地だ。山を眺めながら洞窟で相棒に頼まれた内容を思い返した。
『我が眷属を月に帰る手助けをして欲しい』か。俺にできることはあるんだろうか? いや、他でもない相棒の頼みだ。できるできないではなく、最後まで協力したい。協力するからには相棒の希望をかなえてあげたい。父上達にも相談して協力してもらおう。
漠然とではあるが、今後の方針を決めた。もう一度顔を洗い、「さて出るか」と湯船から出ようとすると脱衣所の方から声が聞こえる。
「ダーシャ様。お召替えの準備が整いました。本日のパーティー用の衣装にございます。」
声の主は、姉代わりで女中のマーシャだ。
「ありがとう、マーシャ。念のために聞くけど、僕の苦手な準礼服じゃ無いよね。」
子供のころから何かにつけてピシッとした服を着せたたがるマーシャの事だ。
「ええ、違いますよ。」
5年間着慣れた作業着からいきなり準礼服に着替えるのは回避できたと安心して脱衣所でた。そして用意されていたのは準礼服ではない。うん、確かに準礼服ではない。
用意されていたのは正礼服だった。
「マーシャ! 謀ったな!!」
しかし、脱衣所には俺しか居なく、用意されている服は正礼服しかなかった。裸で脱衣所から出て行くわけにもいかず、俺はあきらめて正礼服を着るのであった。
服を着替えて、衣裳部屋に駆け込んだ。せっかく湯に浸かって流した汗は何だったんだろうか。俺の額には新しい汗が浮き上がっている。
「お待ちしていました。」
笑顔で出迎えるマーシャは、そっと俺を包み込むように抱擁した。
「マーシャ・・・?」
「ダーシャ様が居ない日々は、とても切なく、寂しかったです。しばらくこのままで居させてください。」
潤ませた瞳で俺を見つめるマーシャ、俺は行き場をなくした手をそっとマーシャの肩に置く。
「ちょっと待った!」
肩に置いた手に力を入れてマーシャを引き離した。引き離されたマーシャは「いたずら失敗」と悪びれもせず舌をぺろりと出した。




