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キラキラ光る

作者: ミント

ゆーちゃんあのね、私ゆーちゃんのこと大好きだったよ。小さい頃から一緒にいてくれた貴方はいつもキラキラしていた。そんなゆーちゃんが大好きでした。



ゆーちゃんがこの町を出て遠くへ旅立つことはずっと前からわかっていた。

俳優になりたいという大きな夢はこの町では叶わない。

だからゆーちゃんが遠くへ旅立つことはわかっていた事なのにとても胸が痛い。


ゆーちゃんは今日の最終列車にのってこの町を出ていく。ゆーちゃんを見送るため、ほぼ日が落ち蛍光灯の明かりだけが便りの駅でたった一つしかないベンチに腰掛ける。

ゆーちゃんはまだ来ていない。待ち合わせの時間まであと10分。

「ゆーちゃんおっそーい、早く来ないとかえっちゃうぞー」

そんなつもりはないが1人でいると泣き出しそうで早く早くと念じる。そのくせ、ゆーちゃんが居なくなるのが嫌でこのまま来なくていいのにと思っている自分もいる。


5分ほどして大きな荷物を持ったゆーちゃんがやってくる。

「ちー早いな。待たせただろごめんな?」

頭をわしゃわしゃ撫でながら顔をのぞき込んでくるゆーちゃんから目をそらす。昔から変わらない接し方。子供扱いはやめて欲しいのにそれを言ったら何かが変わってしまいそうで何も言えなかった。

「んーん、大丈夫。大して待ってないよー」

ゆーちゃんがのる列車が来るまで10分もない。でもただ見送るためだけに来た私に話すための時間は必要ない。



駅にある唯一の蛍光灯がチカチカしながらベンチに座る私と隣に立つゆーちゃんを照らす。



ジリリリリリリリリ


列車が近づいてきたのかベルが鳴り始める。

列車が駅につくまでの間何をいうわけでもなく、ゆーちゃんは私の手を握っていた。チカチカしていた蛍光灯の明かりは消えてしまった。

列車が駅についてゆーちゃんは私の手を一度強く握り締め、そしてもう行くねと微笑んだ。そしてゆーちゃんは最終列車に乗りこみ私に手を振った。扉が締まり列車は行ってしまった。私は一度も声を発することも手を振り返すこともしなかった。


1人きりの帰り道、どうしてもゆーちゃんのことを考えてしまう。大きな夢を追いかけていったゆーちゃんはきっと私のことなんて忘れててしまうだろう。新しい土地でたくさんの出会いのなかで旅立った町の一人の女の子のことなんて記憶の彼方だろう。そう思うととても悲しい。だけど知らない土地に旅立つゆーちゃんの幸せを願う。ゆーちゅんが私のことを忘れても幸せならそれでいい。

「ゆーちゃんあのね、キラキラ光る貴方がいないのは寂しいけど明日からは1人で生きていくよ」

僅かな勇気で遠くにいる貴方に確かな言葉で伝えよう。


さようなら


涙で顔がぐしゃぐしゃだけど私は出来る限りの笑みで一人つぶやいた。


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