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第5話 張りつめた予防線




 昨夜、さすがにあたしのボディーブローが効いたのか、泰斗はあたしを追っては来なかった。

 翌朝、先に出てやろうと意気込んで早起きしたのに食卓に顔を出せば。


「よう、ずいぶんと早起きだな。あ、おかーさんみそ汁おかわり!」


 いつもギリギリなヤツが、我が家の朝ごはんを食べていた。





 いつもどおりの登校風景。

 となりの泰斗はうるさいくらいしゃべるし、笑う。

 気をつかっているのがバレバレだ。


 少しでも笑ってあげようと思うのに、どうしてもうまくできない。

 あたしはそもそも演技派ではないのだ。

 これまで困ったことや落ち込んだことがあってもなんとかうまくやってきたのに、今回に限ってはさっぱりだ。


「ゆい」

「なに?」


 呆けていたところで声をかけられた。

 となりを歩いていたはずの彼はいつの間にかその歩みを止めていたらしく、少し後ろで立ち止まっていた。


「ごめん」


 その言葉と同時に頭を下げた彼に、あたしの足は急停止した。


「ちょ、なに? なんで頭下げるの」

「だって、俺が悪いんだろ。昨日からお前おかしいじゃねーか」


 たしかに。

 原因は泰斗にあるけれど、別にここまでして謝ってほしいわけじゃない。


(放課後、どこにいってたの)


 胸がいたい。


(あたしに愛想つかしたの)


 彼の目が、あたしを見る。

 吐き出してしまいたい想いはあふれかえるようで、だけど口には出せない。

 それじゃあ、認めてしまったも同然になってしまう。


「泰斗のせいじゃないから、気にしないで。あと」

「あと?」

「今日は委員会の仕事で遅くなるから、先に帰ってて」


 平然と言いのけられたあたしに拍手を送りたかった。

 自分から予防線を張ってしまえばいい。


 彼にこれ以上近づかないように。

 彼がこれ以上近づかないように。


 放課後、彼が何をしていようがあたしには関係ない。

 あたしたちは幼なじみというだけの間柄。

 それ以上を求めるからいけないんだろう。


「わかった」


 自分から突き放してしまえばいい。

 そうすればきっと、こんなにも胸が痛むことはないはずだから。






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