プロローグ
―優秀なナンバー2がいる組織は伸びるって,本当なんだな―
深月 青は彼の後ろ姿を見ながら,ぼんやりとそんなことを思っていた.
「ほんと,別世界だよなー…」とも.
彼―柚木冬夜は,南高生徒会の副会長だ.生徒会長の須藤光貴と共に,この学校の指揮を執っている.穏やかで人懐っこい光貴に対して,冬夜はあまり感情を表に出さず淡々と仕事をこなす.異常なほど仕事が速くて正確.ある意味では,生徒会を動かしているのは冬夜だといえるかもしれない.そんな対照的な2人だが,不思議と気があい,仕事の相性も抜群だった.生徒たちからも“最強コンビ”と言われている.
いろいろな面で有名な2人だったが,この2人に負けずこの学校で目立つ存在なのが,会計担当の奥村涼風だ.華やかな容姿に,成績はいつも学年で5番以内という頭脳の持ち主.相当に自由な性格も,彼女の魅力の一つになっていた.青とはまるで違う世界にいる彼女だが,なぜかこの2人も気が合った.
そしてその南校生徒会で,青は書記をやっている.プラス雑務全般担当.単調作業を飽きることなくできるのは,自分のほとんど唯一といっていい特技だと思っている.今のポジションは自分に合っている.本当にそう思う.そしてもうひとつ,自分がこの4人の中で「異質」であることも― よくわかっている.
普通という言葉が人の形をして出てきたような容姿.成績も中の中(もっとも,理系科目は下の中で,文系科目は上の中のために平均をとれば,の話だが).もらう褒め言葉はいつも「親切」,「真面目」.生徒会執行部の4人の中で,容姿,頭脳,仕事ぶりどれをとっても自分だけが冴えないことを自覚している.もちろんたまにそれが悲しくもあるが,それ以上にこのメンバーが,もっと言えばここに流れる空気が好きだから,私は降りずにここにいる.
読んでいただきありがとうございます.
初投稿です.よくある設定ですが,登場人物の心を丁寧に書いていけたらいいなと思っています.
よろしくお願いいたします.