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7、夢

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 目を開けるとそこは僕の住む家だった。

 布団の上にいてシーツを被っていた。

 部屋は暗く、少しだけ寒かった。

 太陽が昇るにはまだ時間がある。

 僕はいった。

「夢をみたんだ」

 そこには誰もいない、滋野新剛の布団の上。

「母親の出る夢……。知ってるとは思うけれども、僕の母親は僕が幼少の時に他界しているから……だから、母親はその時のままで……笑っていた。僕は成長して今と同じ体つきだから夢の中では母よりも僕のほうが大きい」

ふぅと軽く笑った。

「母は僕に優しく頬に触れると僕の目を見て嬉しそうに笑っていたよ、それ以上の感情があることは僕も見て取れたんだけど、分からなかった。母は速く寝なさい、ご飯できたわよとか、次のテストは頑張れるといいわね、なんてまるで子供扱い何だ、こんなに大きくなったのに……十年以上も経ってるのに…………」

「僕を何時までも子供扱いするから俺は母にいってやったんだ。もう子供じゃない立派にここまで大きくなったんだよ、といった。すると母さんは、ほらハンカチ忘れてるよ、といって僕にハンカチを渡すんだ。そして、それを僕は受け取った。ベージュのきめの細かいシルクのハンカチ。刺繍がされていて女物だったと思う。すると、母さんの目の前で赤いロープが引かれて僕と母を区別された。母親は僕だけを見ていたが、僕は慌てふためいた。そんな様子を見かねてか、母は言ったんだ。ちゃんとハンカチもった? そして僕は家を出てどこか知らない街について、あたりを見回していると……ハンカチを無くした」

 それが一つ目の夢。

「次の夢は僕がおじいさんになっていた。母さんはやはり美しいままで生きていた当時の服と鞄を持っていた。

 母さんはどこか疲れたバスターミナルにいて、椅子に座りながら僕のことを探していたみたいだった、最初母を見つけるまではものすごく混んでいた待合室も車が来ると、どんどん人が減っていって、結局僕と母だけになる……僕は母の隣に座るとこんな話をした。

 多分この時にバスターミナルから家に風景が変わったのだと思う。家と言っても、今まで住んだことのない場所で、知らないところだった。真っ白い家で、机と椅子と暖炉しかなかった。

母はいった、人生っていうのは片付けたり汚したりの連続だって。それと、あなたは秋が好きでしょう、豊食の季節ですからね。でも私は春がいい……年をとると、なお分かるでしょう。 他にも色々な話を聞いたんだ。それから話が終わってしばらくすると、暖炉の薪がないといって母は外に出ようとした。扉の向こうはひどい吹雪だった。だから僕はまた今度、吹雪が止んでからにしたら、と言うと。直ぐに寒くなるから、動き続けなくてはならないって言うんだ。だから、僕がいくよって言うと。別に大した事じゃないから、暖炉の木の様子と水の点検をしてくれと行った。扉が閉まり母は外に出て行った。

 ……僕には分かっていた。母が帰って来ないことを。

 そして、彼女がどんな時もこの家を暖めるために、居やすいようにしていることを……。

だから、彼女の言い付けを守らずに僕も扉の向こうに足を進めた、空は真っ暗で夜だとわかった。けれども雪の積もった大地は一面真っ白で家に点いていたはずの灯りが消えて、家がどこにあるのか分からなくなってしまった。

 雪原を進むに連れて自分がどこにいるのか分からなくなっていった。とにかく暗くて寒かった。吹雪が体に顔にとぶつかってきて冷たく痛かった、自分自身の肉体も縮こまり、直ぐに家に入りたいと思ったが、家を見失ってしまって、どこだかわからない。周りには誰もいないから、ひどく独りだ。しかし僕は知っていた。僕の母は家の暖炉の火を強くして僕を待っていることを……。そして、母のいるに家に絶対辿り着くことを……。また、帰る道は一つではないということも知っていた……………………」

 そこで目が覚めた……。

 緑色の天使は終始話を聞いていたが何も言わなかった。でも、僕の隣に来て一度だけ頭を撫でた。

 天使、緑色の天使。瞳と髪が薄い緑色。本名を知ることもなく、今のようにずっと黙殺する。行動も制限されたように、いつもこの部屋にいる。呼吸も鼓動もしない様にいつもいる。人形のような彼女。しかし美しい容姿とは裏腹に一切の性的魅力がない。だから、きっと天使なのだ。よくも悪くも天使だろう。色が緑色だから緑色の天使。

何も言わない。

 けれども、いつもそこにいる。

 ……僕にはそれで十分だった。

 僕が瞬きをすると掛け布団が少しだけ湿った。

 今日も天使は何も言わない。

 






今後ともごひいき下さいますようよろしくお願いいたします。

 目を通してくれてKIITOS!

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