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かわいい可愛い、子供だった。こんなにも、愛おしいものがこの世にあるのかと思った。
可愛い、かわいい息子だった。
もっと話をしてやりたかった。
もっと話を聞いていたかった。
もっと抱きしめていたかった。
もっと一緒にいたかった。
もっと色々な料理をふるまってあげたかった。
もっと愛していたかった。
もっと観ていたかった。
もっと、もっともっと、もっともっと、もっと、もっともっともっと。
何もかをも覚えている。
初めてはいはいをした事。
初めて立った事。
よちよち歩きがぎこちなくて、よく転びそうになった事。
始めて折ったくちゃくちゃの折り鶴を私にくれた事。
苦手なピーマンを自分から初めて食べた事。
ちっともうまくならないハーモニカを自慢げに吹いて見せてくれたあの日の事。
駄々をこねて言って私の事を大嫌いだ、といったあの日の事も。
大泣きをしながら私の袖をしっかりと握って帰った、帰り道も。
いつも一緒だった。
大好きな私の子供。
この子さえいたら、私は太陽もいらないと思った。
どんな人に出会い、どんな人を愛し、どんな人と一緒にいるのか。
私のもとを去って行っても、幸せになる姿を見たかった。
わたしのかわいい、かわいい。かわいいわたしのこども。
私達の希望、魂。たった一つの望み。
滋野新剛。