お金を稼ぐと時間がなくなる
製造戦略しましょうか?
「ダメっ!」
耳をつんざく声。
初めに感じたのは痛み、そして僕の体が本当に宙に浮き、男は大きく遠ざかった。
――否、僕が遠ざかったのだ。僕は、はっとした。
聞き覚えのある声、忘れられない音。緑色の天使。
我に返る。我に還る。
「この男は危険、関わる者全てを破滅させる力を持っている。悪の力」
緑色の天使は、初めて僕に話しかけてきた。
一面の闇は夜の世界を作り出していた。光が無ければ大きな窓は何も取りこまない。
その中で彼女だけが輝いていた。体のほてりや浮遊感はもうない。眼下に広がるは己の突き出された両腕と天使、そして闇にその身を喰われた不気味な男が一人。
「アイツ何だ!」
今までに会って来たどの人間よりも生き物よりも、生命特有の音を持たない人物。
「悪人の名前を全部知ってるわけじゃないから……。でも剛の“左手”の事を知っているなんて――普通じゃない」
ふっ、急に笑いがこみ上げてきた。
「じゃあ!! 倒さなくっちゃな!!」
僕は声を張り上げた。
さっきまでの威圧感さえ今は無い。大声になったのは恐怖をかき消したかったのが理由なのかもしれない。
星空の中、学校の校舎の廊下で、僕と件の男との出会いが始まっていた。
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