ヌヴェル15 天使の梯子
「次は、“天使の梯子エリア”です。足元お気をつけくださいね」
天国見学ツアーの中盤。周りには可愛い天使が飛び回っている。
雲の隙間からは地上が見える。その隙間から地上に下りていく光の線。知る人ぞ知る“天使の梯子”だ。
ツアー客が揃ったところで、ガイドは咳ばらいを一つしてから説明を始めた。
「ご覧いただいてます“天使の梯子”は、天上界と地上界を天使が行き来するための文字通りの梯子です。どうです?この黄金色の輝き、とても綺麗でしょう?」
ツアー客の感嘆の声。そして徐に地上界へ降りていく可愛い天使。小さな羽根で飛びながら。
ツアー客「あのー、ガイドさん」
ガイド 「はい、なんでしょう?」
ツアー客「天使は、皆、可愛い羽根で飛んで行きますけど、これじゃ梯子はいらないのでは?」
ガイド 「おー、いいところに気をつかれましたね。それはね・・・」
それは、こういうことらしい。
天使もそれなりに精神的なストレスを抱える。
担当の恋人同士が上手くいかなかったり、悲しい出来事に直面したりしたときの精神的ストレスは半端ではない。
そんなとき、天使は飛べなくなる。飛べなければ、天上界に戻れない。またミッションを遂行するために地上界へ行くこともできない。
“天使の梯子”は、そのためにあるらしい。
「“天使の梯子”って、いつまでも見えていないでしょ。あれは、精神的ストレスを乗り越えて、もう自力で飛べるぐらい回復してきただろうなぁとカウンセラーが判断したら消してしまうからなのです。
天使は落っこちないのかですって?全く大丈夫です。飛ぶ力は潜在的に持っていますから。自力で飛べるようになるのです。少々、荒療治ではありますが・・・」
「今日は、“天使の梯子”が消える場面が見れるようですよ。ほら、今まさに梯子を上ってくる天使がいるでしょう。もう飛ぶ力は戻っているらしいのです。だから、見ててくださいね。ほら!」
黄金色に輝いていた“天使の梯子”が消え、その天使は、小さな羽根をぱたつかせて天上界まで戻ってこようとしている。
そこに響くツアー客の歓声。天上界を見上げた天使の可愛い笑顔。
今日の天国見学ツアーは、成功裏に終わりそうだ。
「それでは、みなさまー、次のエリアへと参りますー」




