遠いところから幸せを願う〜優しい貴方に祝福を〜
三年続いていた戦争に負けた。私は敗戦国の公爵令嬢で第二王子の婚約者だった。
敗戦処理の1つとして第二王子があちらの国へ婿入りすることになった。第四皇女様からのご指名との事だ。見目麗しい事が仇となった。私達は5歳から婚約を結んでいてあと少しで婚姻という時に、戦争が始まってしまい婚姻式が延期になっていた。ある日向こうからの急な開戦だった。本当に急過ぎて対応が遅れた為各所に甚大な被害が出た。我が公爵家も長兄を失った。被害を受けていない家は無いだろう。
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「フローラ嬢すまない。散々婚姻を待たせた挙句こんな事になってしまって。向こうがレオンハルトを指名してくるだなんて…。」
「いえ。祖国のことを考えると仕方が無い事だと思います。」
陛下が謝罪をしてくれるが誰も悪くない。陛下もこれ以上戦争を引き延ばすわけにはいかないので受け入れるしかないのだ。この先陛下と王太子もどうなるかわからない。
「レオンハルトは2週間後に出発することとなった。あちらが2週間もあれば準備など出来るだろうと。我が国の第二王子をなんだと思っているのか…。」
陛下が悔しそうに頭を抱えている。陛下は家族思いで王子様達をとても大事にしていて、幼い頃より婚約者だった私の事も家族のように接してくれていた。
「レオンハルト様のご様子はいかがですか?」
「王子としての責務を立派にやり遂げようとしているよ。周りの皆を気を使わさないよう準備に取りかかっていて。優しい子だから…心配だ。何よりフローラ嬢の今後を気にしていたよ。少しでも憂いを取り除ける様、私が何とか出来ればよかったのだが…すまない。」
そう言って陛下が目頭を押さえる。親心としては1人旅立つ息子が心配だろうに、私の事も心配してくれる。優しい人達と家族になれる事をずっと楽しみにしていた。婚約が無くなるなんて想像をしたこともなかった。
「私は大丈夫です。長兄の事もありますし両親に寄り添いたいと思っております。私の事は気にせずレオンハルト様には、旅立つまで少しでも穏やかに過ごして頂きたいです。」
「あれ以降会ってないのではないか?」
「はい。しかしもう会わない方が良いと思います。皇女様の婚約者になられましたし、不義を疑われる様な行為はしない方が良いと思いますので。」
敗戦が決まった時から会ってない。婚約して以来こんなに会わなかったのは初めてだった。よく一緒に街へ出かけたり他愛もない話をしたり、私達はずっとずっと一緒に居た。本当は寂しくて仕方ない。しかしレオンハルト様は単身国を出る。私の比にならないくらいの気持ちを抱えているだろう。
あまり会うことがなくなるだろう陛下に挨拶をし退室した。王妃様はレオンハルト様の事で体調を崩し寝込んでいると聞いた。あの日以来日常が崩れてしまったがどうする事もできない。
2度と歩くことがない王宮の廊下を歩いて想いを馳せる。レオンハルト様の部屋近くを通りかかったので窓の方を見上げた。ふと外を見ていたであろうレオンハルト様と目が合う。来ていることを知っているから、きっと通りがかるのを待っていてくれたのだろう。いつも通り手を振り笑って答えようとしてしまった。あんなに近くに居たのに、こんなに遠い。
しばらく目が離せなかった。グッと堪え私はニコッと微笑み頭を下げて歩き出す。ずっと大好きだった。優しくて私の事を誰よりも想ってくれ、一生一緒に居ると思っていた人。涙は流さない。優しいあの人がきっと気にしてしまうから。
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2週間後の旅立ちの時、皇女様が迎えに来たと人づてに聞いた。
私は出発に立ち会えない。幸せが再び訪れるよう鈴蘭の花を1輪だけ両親に託した。
皇女様が優しい人だと良いな。優しいあの人の憂いを取り除き、愛し合って歩んで欲しい。大事にされ幸せになって欲しい。私のただ1つの願いだ。




