眉月
『虚飾の水鏡』に登場する、ぬるい話担当の3人です。
斉川 淳
スリーピースバンド『エカルラート』のギター兼ヴォーカル
能代秀之
ゴシック系バンド『ルアード』のギタリスト。淳の幼馴染
橘晴臣
『人工楽園』ヴォーカリスト。通称『インディーズ界の相談役』
「美味しそうだなあ、あれ」
斉川淳が指をさす。
能代秀之が指先を辿ると、そこには細く輝く月。
「美味しそうって、おい」
「こう、口に含んでさ、溶けそうで溶けない感じ。舌で押したら割れそうな。でも、割らない」
興奮して身を捩らせながら淳が話す。
「訳わかんないな」
秀之は首を捻る。
「あれは繊月? いや、もっとはっきり見えるから三日月か? 朔月はいつだった?」
橘晴臣は夕暮れに浮かぶ月を見やる。
「何それ?」
秀之と淳が揃って晴臣を見る。
「⋯⋯月齢。東京で見えるなんて思わなかった。淳の家が西の果てで良かったな」
「西の果てとか酷くない?」
「月齢とかよく知ってるな」
「⋯⋯秀之は大学行ってなかったか?」
「私立のエスカレータだから」
「こいつ、幼稚園からなんだよ。小学校の時なんて近所の公園で暴れてたのに」
気に入らなければ誰にでも喧嘩を吹っ掛けていた秀之。
そんな秀之と淳は公園で知り合った。
「おまえはそのお陰でうちの親にピアノとギター教えてもらえただろうが」
「それはー、感謝してるけどー。そもそもおまえが俺を吹っ飛ばしたからだろうが」
秀之の両親は揃って音楽家だ。母はピアノ講師もしている。
「まさかそんなバイオレンスな出会いだとは思わなかったよ……」
「ふふっ」
秀之の薄い唇が三日月のように弧を描いた。
ぬるすぎて、ごめんなさい。




