全員ADHD共鳴体験の翌朝、反省会という名の哲学劇〜
タイトル:『余韻と構造:共鳴のあとで』
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Scene:午前9時。部室。
薄明かりの中、机にはコーヒーとスポーツドリンクと使いかけのタスクメモ。
昨日のホワイトボードには謎の記号と落書きが残っている。
Scene 1:沈黙から始まる反省会
(全員、言葉を発さないまま数分が経過)
たきな(低く)
「まず、全体の状況整理から始めましょう」
夏美
「うわー出た、“おはよう構造主義”」
たきな
「昨日の状態を、私なりに分解すると――
“タスク爆発”“言語不整合”“感覚過多”“時間認知の混乱”……
そして、“なぜか不安より快楽が上回っていた”という矛盾があります」
ひとり(ぽつりと)
「……怖かったけど、たのしかった。
でも……“あの感じ”って……なんだったんでしょう」
Scene 2:チサト、語る「自由の代償」
チサト
「ねえ、自由って、“重さ”あると思う?」
(全員が黙る)
チサト
「昨日のわたし、全部のやりたいことに手を出して、
全部中途半端で、全部が楽しくて――
でも今朝起きたら、“何一つ残ってない”感じがして。
ねえ、“生きてる感覚”って、記憶じゃないんだね」
圭介
「それでも、あんたの“動き”は全員に波紋を与えてた。
意味がなくても、作用はある。それは記録者として保証する」
Scene 3:リョウ、音で語る
(リョウ、ギターの空弦を軽く弾く)
リョウ
「“音楽にならなかった音”だけが、今、耳に残ってる。
あれは曲じゃなかった。会話でもなかった。
でもたしかに、“自分”だった」
夏美
「だよね。
昨日の私は、“一瞬しか存在できない自分”で、
でもその一瞬がめっちゃ本物だった気がしてさ。
あれ、カプセルが見せた幻じゃなくて、
多分、ずっと中にあったやつだった」
ひとり
「……私は、はじめて“しゃべりすぎて怒られない”場所にいた気がする。
全部の音が、誰かと重なってて、
“ひとりじゃない”って、あの時だけは信じられたの……」
Scene 4:たきなと圭介、“構造と虚無”をめぐる会話
たきな
「私たちは、“やるべきこと”の中で生きてきました。
でも昨日、やるべきことが全滅したとき、
それでも私たちは“動いていた”。
……それは、生存ですか?脱構築ですか?」
圭介
「どっちでもない。
あれは、“形式の死体から生きた声が出てきた”ってだけさ。
つまり、“制度外の衝動”だ。
人間が、理屈じゃなく、関係で生きてるってことを証明した日だった」
Scene 5:終わらない問いの中で
チサト(笑いながら)
「ねえ、またやろうよ、あれ」
レナ(少し目を伏せて)
「否定はしません。ですが、事前に“観測者”を入れてください」
夏美
「じゃあ次はさ、“テーマ”決めてから混乱しよ?」
ひとり(小さな声で)
「次も……しゃべっていいなら、また……あの場所にいたいです」
リョウ(静かにコードを弾いて)
「じゃあ、“混沌のうた”の第2楽章ってことで」
圭介(ノートを閉じて)
「記録者として一言だけ。
“壊れた構造のあとに残るのは、沈黙じゃない。声だ”――
君たちは、昨日、たしかに叫んでいた」
余白に書かれたメモ(翌週、誰かのノートに)
「秩序の向こうに、自由があると思っていた。
でも自由の向こうに、また関係があるとは――知らなかった。
わたしたちは、
‘まとまりのないまま共鳴した’。」