圭介が“赤いカプセル”を飲んで1日だけADHDになる日
〜圭介、限界脳内多動モード〜
Scene 1:午前10時、赤いカプセル服用
圭介(コーヒー片手に)
「……夏美。これ、飲んだのか」
夏美
「うん!昨日は宇宙と会話できた!今日は圭介さんの番だよ〜ん」
圭介(半笑いで)
「やれやれ。まあ、“一度やってみなきゃ分からない”ってのが編集の鉄則だしな……」
(※ゴクリ)
レナ(観察開始)
「服用確認。生体モニタリング起動。たぶん30分で変化が――」
圭介
「ねえ、今俺、考えてることが三重に分岐してる気がするんだけど。AとBとCって感じで。え、ていうか今日って何曜日?あ、いやでも原稿締切は月曜だよな?ていうか俺、原稿何本抱えてたっけ……」
チサト
「早っ!!!」
Scene 2:午後、完全暴走モード
圭介(ホワイトボードに殴り書き)
「いいか!?“書く”って行為は、“忘れる”ためにあるんだよ!!“記録”ってのは、“一度自分から切り離す”ための……えーと、あれ?俺、何言おうとしてたっけ……いやでもそれってラカン的にはシニフィアンの分裂……いや違う、それは大学の……ええと、ああああ」
ひとり(怯えながら)
「圭介さんが怖い…圭介さんが…文字の洪水に沈んでる…」
夏美(爆笑しながらiPhone構える)
「やっば!今の言語の爆発、最高に“映え”!“哲学YouTuber圭介”始まった!!」
チサト(冷や汗)
「待って、圭介さんって元々は“諦めた大人代表”だったよね!?なにこのインナーチャイルド大暴走!!」
Scene 3:思考の断片化と過去の亡霊
圭介(突然静かに)
「……あのとき、俺、部下に“お前の文章は読みにくい”って言ったっけ……でもほんとは、“読めない俺が悪かった”んだよな……」
レナ(記録を取りつつ)
「感情処理と記憶再構築が同時並列で暴走している模様」
圭介(笑い出す)
「なあ、俺さ、ずっと“ちゃんとした大人”をやってきたと思ってたんだよ。でも、ほんとはずっと焦ってたんだ。毎日“やること”だけ増えて、“やったこと”を実感できないまま、タスクリストだけが増えてって……あれ?俺、いつから休んでないんだっけ?」
リョウ(ギターを静かに鳴らしながら)
「……“焦点”って、持ちすぎると溶けるんだね」
Scene 4:夜、帰れない大人の独白
圭介(壁にもたれて、虚ろな目で)
「文章って、誰かの心に届くものだと思ってた。だけど今思えば、俺の言葉は“締切に追われる自分”への弁明だった気がする。
俺はずっと、“誰かの期待”に応えることで自分を保ってた。
でも、誰も“俺自身”の言葉なんて求めてなかったんじゃないかって――」
チサト(優しく)
「それでも、書くんでしょ?」
圭介(ゆっくり笑う)
「ああ。明日もな」
エピローグ:翌朝、ノートに残されたメモ
“思考が溢れるって、怖い。でも、言葉にできたとき、俺は確かに“生きていた”。
ADHDは、“過剰な感受性”じゃない。“生きてる回路がオーバーロードしてる状態”なんだ。
赤いカプセルは、それを“借りた”だけだった。
俺はもう一度、自分の回路を取り戻す。”