第七章(3) 誘いの返事 By ハロルド・レイルズ
「で、他に考えられる理由は・・・・」
「失礼いたします」
スタンの言葉の途中で、ドアの外から声がした。
「 レイルズ様、お屋敷よりお返事が届きました」
屋敷との連絡を頼んでいる従者だった。
「分かった。仕事を片付けるのに集中したい」
「そ、そのことなのですが・・・・」
「どうかしたのか?」
俺は了解したという返事だと思って、屋敷に帰る為に仕事を終わらせようとした。いつも俺が『集中したい』と言えば、従者は『分かりました』と言って引き下がるものだが今日は少し様子が変だった。
「入室許可を いただきたく。外では話しにくいお話でして」
俺はそう聞いて、許可を出す前に扉を開けた。
「何かあったのか?」
「いえ、そういう訳では。しかし、お返事がこの一ヶ月間、同じ 『本日はご遠慮させていただきたい』というものでしたので、勝手ながら、心配しておりまして」
妻が今まで、これほど長い期間、俺の食事の誘いを断ったことはなかった。今日はどうしても外せない用事があったのか?・・・・いや、それはない。妻に屋敷の外の知り合いはいないだろう。だとしたら・・・・。
「スタン、悪い!俺は屋敷に行く」
「はぁ!今から?」
驚くスタンを置いて、俺は部屋の外へ出た。
もし、妻にまた何かあったらと思うと怖くて、屋敷へ向かう俺の足はどんどん早くなった。