罪悪感
例えば、もしロボットが人の食物を食べられエネルギーとして消化できるとしたら?
もし、人と同じように感情をもっているならば、嬉しいことも悲しいことさえ理解できる。
それは、ロボットだから? 人間だからなのだろうか?
「そこはユーリに任せるよ。俺はあくまで“お目付役”を買おう」
「おめつけやく?」
「ああ、文字そのままのように、他人の行動を監督するわけじゃないぞ。俺は単純にユーリが学校で何しているかくらい自由だし」
他のもしもユーリが機械的な行動を取った時には説き伏せる。
翻意などについてクラスメイトに説得させるような……ずっしり重く圧し掛かっていた。
それにしては朝食にしては、調度いい時間になりユーリとクロアの並んだきっちんでは楽しげな声が聞こえてくる。
だが、今対面しているのは秋月なわけで不満げな態度はお互いさまなのだろう。
彼とは釣り合いが取れない。
そう断言できたのは、強ち間違いではない確信がある。
「っで、お前はユーリにたいしてきちんと責任を持っているわけだから。男としての度胸が欠けている」
その前に秋月には協調性が欠けているなんてツッコミを入れたい。
大体話に脈絡ないし。それにおけるヤクザのような凄味が兼ね備わっていた。
ついでに言えば、極度のお節介さとクロア溺愛なのか、クロアがこの男に惹かれたのかわからないけど仲睦まじいところはたびたび目撃していた。
クロアについては、後で直接本人から聞いた方がいいだろう。
「話は変わるが、秋月まで朝食を取る必要ないだろう」
「当り前だ。俺はクロアが用意してくれた物で済ませたわけだ。だけど、アイツも好意的な人間を恩恵たらしくも厚かましいくらいに世話するからな」
それじゃあ、この一連の騒動はクロアが原因らしい。
それにしても、俺は料理が出来ないわけではないしかといってユーリは料理の手解きなどされなくても調理をこなしていた。
ぶつぶつ嘆く秋月。
それにおいて、朝食を準備していたクロアが秋月に朝食ではなく珈琲を用意していた。
対するユーリは……調理は完璧だったのだが、運ぶ際はすごく危ない。料理に関しては、特にこれといって悪いという要素が……。
「てっ、手伝うよ。ユーリ」
まあ、当然だろうね。
皿を運んで、直接的な手伝いをしつつ軽い準備を済ませる。
椅子に座った時には既に秋月は珈琲を飲み終えていた。
「美味しくなければ、素直に不味いと申してくださいね」
「いや、まだ食べてないからわからないけど」
一口目玉焼きを箸で摘まみ、放り込む。
調理に関しては、うん。美味しいのだが。なんというか、すごく親切なモノとは違いデータ計測といったその細部の感覚は、食べ慣れることによって感じないがあえていうならファミレスに出される料理だ。
「美味しいよ。ユーリも食べよう」
「ありがとうございます。 すごく嬉しいですっ!!」
気がついたら、ユーリに対するぎくしゃくも自然と消え失せていた。
随所した自分への罪悪感はまるで小さいことだと、なにも知らないようにユーリには笑顔で迎えられた。
美味しいという評価が嬉しすぎて、片づけようとした皿をずるりと手に持っていた皿を滑らせ案の定落としてしまい当然の如く割れる。
ぱりんと、甲高い音がリビングに広がり辺りは騒然とする。
「ひぃやぁっ!!!」
驚いて、虚脱したユーリはまるで見失うかのように途方にくれていた。
俺は冷静な判断で箒を素手で皿の破片を片付ける。効率に関してよりも、その方が正しいと思ったからだ。
だけど、
「―――っ!!」
ガラスの破片が指を切って尽かさず胸元に隠した。
それでも、ユーリには見えてしまったようで。
「あ、あの……ごめんなさい」
「いや、仕方ないさ」
ぱたぱたと、急に走り出して戻ってきた時には絆創膏を手渡してくれた。
「私が片づけますから」
クロアも手伝うように、破片を塵取りへ集めて終わったらすこし小さくなっていた。
ユーリの成長期という部分おいて傍にいるだけでも、たぶん日常にいていた時間からかけ離れていた。
「これから、秘密の会議します。なるべく覗かないでいただければ幸いなのですが
「ああ、2階の部屋……使うといいよ。奥の部屋とユーリの部屋があるだろう」
「いいんですか? ハルさん」
「お前の部屋だろう? 俺の許可は必要ない」
ありがとうと言葉を残してクロアのちぐはぐした表情に、面白みを感じていたがユーリと、その背中を後ろから眺めて俺は再度珈琲を片手に寛いでいた秋月と対面するように腰を落とした。
それも悪い人じゃないって、わかっているけど。でも秋月のことは信用してない。
「―――そうか。懸命な判断だ。今日も面会にいくのか?」
ピクリと動く。
「ああ。大事な母親だから」
そこにそれ以上の言葉をかける気にもなれなかった。
その必要さえ、重要視していない。
肝心なことは、ユーリにおける俺の存在が今のこの人には単なる責任者としての位置づけであり微細されたことを成し遂げることを目的だからつまりユーリと、クロアのことしか頭にない。
でも、俺にはそれで十分だった。
家族のこと。自分自身のことをあまり関わられたくなかった。
他人を拒絶する俺。他人を強引にも関わろうとする秋月。
一概してみれば、彼との世間体での仲で俺のことを深く思うはずもない。
それなのに、
「そうか。いい息子だな、親孝行で」
「親孝行……その言葉が一番似合わないな。それらしいこと今までしてあげられたことがないんだ」
だけど、秋月がぐしゃぐしゃになるくらい頭を撫で始めた。
「いいさ。まだ生きている内は何とでも親孝行できるだろう? そうだユーリの部屋でも覗きに行くか?」
「遠慮しておきます」
やはり、秋月という人間は変わっていた。
今度は、ユーリ視点でハルを見たときの場合と今回はドジっ子だということが改めてわかりましたね。
特に、重要視するべきところでもなく平坦さゆえですけど。
まだまだ続きます。すこし長いかもしれませんね。