Innocence
胸部から装備されていた機関砲、クロアに標準を合わせ掃射し散弾と散らばり、辺りには炎が噴く。
「させない」
クロアは肘関節をつかい、折り曲げつつ前腕へと力を込め弾丸を手指の力だけで脚力は一切使わない。
大腿骨からの掠めた弾。さらにはクロアの右肩を越え、衣服の一部とそれに反射したように自身のベレッタで直撃を抑制していた。
踵を返し、体の反りで後方倒立回転から顎を上げ、片手で後方へ振り上げた手を着地するや否や連続で体重移動する。
回転力から屈伸をし、僅かな誤差さえも許されない中で肘に負担を考慮してか。
突き放した姿勢で壁へと振り下ろし、そのままの姿勢で狙い撃つ。
「撃ち漏らすことはない、だから当てる」
貫けないとは蔑む程度に嘲る。
だが、連続したピンポイントショットに装甲から押し戻されたようによろけた強化外骨格へと近付き機関砲目掛け前腕部から腕を変革。
骨と骨格筋から内蔵されていた軟骨状の単射式のライフル弾が、音を立てて構造上の装填し発射体から飛び出した高初速の弾丸は機関砲をひしゃげる。
使い物にならなくなった機関砲を他所に、自らの戦術もなくアームスーツが強引にクロアに当て身を食らわし、退く時間も与えない。
(終わりだ!!)
腰に装備されたライアットガンはマガジンボックスから散弾型の弾薬交換を済ませ、クロアに銃口を向け無反動のまま、打ち込む。
しかし、彼女の動きが完全に停止したわけではないと右脚から腰を落とし、手前へと飛び込みながら、リロードしたベレッタで機関砲の弾を相殺させる。
左脇の側頭筋複合ユニットから、強固である人工筋肉が露出して回旋した脛は接地部へと血液が流動していた。
視界に留め、アームスーツのパイロットが目にしたのは、ショットガンを転送し至近距離でクロアの胴体が飛散する光景だった。
(勝った―――)
唇を噛み締め、何度も翻してきた技術の集合体には勝利の美酒を味わう。
それは歓喜という言葉に集約してもいいほど、激震している。
肩口から人工血液が吹き出し、微細とした破片。
金属である頭部の神経ユニットは吹き飛び、脳である中核の電子頭脳とした頭蓋は形もなくない。片腕はもぎ取れ、鮮血とした血液が吐き破片としたパーツを見ても再起不能。
胸腔は剥き出しになりながら内部を抉り、動力炉からはスパークが発生していた。
そうだ、これが結末なのだ。
一瞬でもなぶられてしまうような気分にさせたソイツは砕け散った。
いうなれば結論なのだと蹂躙したのだと映像先から優越感に浸る。
怨みがあったわけでもない、ただ、あったのは敵を倒せと命令されただけ。
(ふは、ふははは。勝ったぞ)
だが、死ぬ間際でさえその彼女の姿は一瞬でも気をとられてしまいそうだ。
人間と非なるモノ、だとしてもそれには何かの意味合いが存在するように。彼女の死そのものに意味などなかったのに、感慨としてしまう。
それでも、終わってなどいない。いや、終わるはずがないのだと。
映った映像はまるで虚像を描くように、まるで霞むように映像が揺らぎ、気が付いたときにはコクピットからの衝撃に襲われていた。
そして、彼女の姿が蜃気楼のように霞んで消えてしまい、残っていた偽物を描写していたということなのだろう。
(疑似体験、まさか、そんなはずはない)
目を見張るパイロットが、衛星からの擬似映像であったことに気がつけなかった愚かさを愚鈍と呪った。
「Auto Defense」
効率的な方法があるのだとしたら、最良とし判断を死ぬという恐怖に打ち勝つ方法を採択し、行使する。今必要なのは、決意なのだ。それ以外必要ない。
「Full mode!!!」
クロアが叫び、待機させてあった大気圏外の衛星全てをフル総動員してアームスーツの暗号端末から発射の瞬間にネットワークを介して特殊プログラムを侵入。
常時並列回線から増殖し始め複製されたプログラムは瞬く間に、ファイヤーウォールを越え、内部のアクセス権を掌握しようとセキュリティウイルスである物理防壁を突破した。
「go.」
アームスーツに搭載された集合体であるOSが、ランダムに再構築した変動パターンを割り当て潜伏型のウイルスを対策用にデコイで再構築した抗体によって防ごうとする。
だが、システムが耐性破壊をしようと防壁を展開したが、クロアは複数端末とした衛星軌道上にある人工衛星を3機同時に操作という離れ技において、そんなものは容易い。
抗体から、例え消滅させられたとしても、複数の衛星からウイルスを直接的にアームスーツの基盤であるOSへと送り込んだのだ。
自己増殖をはじめ、BIOSにまで手を出し、制御を奪い起動させまいと失墜させる。
定義から未知にウイスルに対しての検知機能がないOSが補助以外のプログラムを消去するが、ウイルス自体が隠蔽。
アームスーツが内蔵されたBOISを再起動する前に、抗体を阻止してしまう。
そして中枢システムにまで到達し、あろうことか突然深刻なエラーを起こしウイルスによる制御OSに緊急制御システムが応答しなくなり、物理的に機能を止めた。
「これで貴方は、ただの大きな的。量子型演算処理システムのバックアップ無しでは」
狙いをあさっての方向へと、ライアットガンだけが虚しく響く。
ようやく、悪魔として静かに終えたのだとクロアは肩の力を抜けてしまう。
遠目から窺い知れた様子ではもう内部OSを停止させたのだ。甚大な被害をこうむることになったがそれでも機能停止状態まで陥らせることができた。
口元から恐怖と戦慄が全身に広がり、だから最上であり最善とした策をとったことには後悔していなかった。
それに破損箇所からみて行動制限になるほど、危険域から回避したのだからこれでいい。
落下位置とはいえ、橋の上には春陽さんがいるのを確認済みだ。
「終わりね。手間取らせたけど………でも」
挫く体。
落下した地点が、教会であったことをしったのはその数分後だった。
月影楼に浮かびあがるステンドグラスは、聖者を寄り添うように守護天使を表現し、配色が美しい立体視。そして教会の中心に位置したマリア像は目頭に血のような涙を流している。
人の姿が消えて、風化した景色に色褪せたかのような色合いは投影されたように佇む。
幾多の鐘がまるで止まった時間を不浄とした悠久を終止するように、2度と鳴ることはない。
立派な建物であったことを伺い知るわけだが、動揺すべきは廃墟として天井は倒壊して中に薄暗い景色に月が照らしていた。
「……」
崩れ落ちたはずなのに、量子型演算処理システムがなければ停止するはずの奴は再始動を始めあろうことか再び弾を装填しはじめた。
予備擬似OSが修正、修復したのだろう。本当に、脅威としては素晴らしい出来としかいいようがない。
まるで、赤い光沢に魅せた化物は睨みかけるよう。狩られる気分を味わうことになるなんてクロアは肩を落とした。
予備弾倉すらない。撃ち尽くした拳銃だけがスライドからクロアを守る盾の役目になれるわけがなく。
外反とした体の外周りに矯正し、接近戦での絶大を誇るショットガンの威力は真後ろの建物を突き破って窓ガラスを突き破り、別棟へと立てられた建設地帯へとクロアが転がる。
既に、クロアにとって体を自由は利かなかった。
上半身だけでも起き上がろうと、肘が震えて指先は痙攣を起こしている。
体は横たわり、床に体を着いて視覚野に収めた視神経は暗くなり瞬きする間にアームスーツが寄って最後だとクロアの頭を掴んだ。
ゆっくりと、絶望を付点する。
本当にやれる術はなかったのだろうか、自分のやり通した事への慚愧のいたりだけが酷く残っていた。
それでも、もがく。手足をばたつかせて、抵抗し春陽を守る約束を果たせない自分の惨めさを決別させる。
懸命に暴れ死闘とするクロアを、八重乃春陽が疑然と見過ごせるわけなかった。
う、さすがに長いからいい加減に終わらせる気でいないといつまでも引っ張っている気がしてしまって……。
予想だと後2回で終了しませう。
うう、大分迷惑を被るような気がしてしまって申し訳ないです。