衝突
例えば、交通事故のようなもの。人生における突然の出来事というものは予め予定されていた運命とはべつに何かの因縁によって歯車がべつに組み込まれ音を立てて、動くようなものなのだ。
自転車二人乗りをして帰宅する。
夜道とはいえ、初めての運転に迷いもあった。
確かに、服代は痛かったけど。それでも些細なことだと、勝手に決めつけ重たいペダルを踏んで、微速でも前進していた。
それでも、上調子にこいだペダルと後ろからぎゅっと温かみをかかえられるよう。
だから、だから、久しぶりに快調に前進できた気がする。
揺れているのは、ユーリの長い髪とスカートだった。
自転車のLEDランプがすこしばかりくらい夜には存分に役立つ。
ただでさえ、二人乗り自転車にユーリアは自転車に乗ることさえ初めて。
スカートとか着たばかりなのに、シワとか気にしてしまうわけでもない。
「すこしばかり、お尻痛いです。じんじんします」
「仕方がないだろう。この体勢は家まで我慢だ」
うぅ~と、涙目なユーリを愉快にいつまでもしているわけもいかないだろうけど。
「ユーリ、あのさ」
「はい……ハルさん」
二人乗りの不安定なバランスに慣れない操作。
バランスの悪さに白黒したユーリの顔。
それよりも、間もないためか一つの動作をすることにまるで赤子のようなユーリ。
当惑して、それにまるで経験をしていないことを一から経験している。
単純に服を着るにしても、今のユーリではまったくの無経験だったわけで。
拙い言葉を、伝達機能としての成長を促すとはいえまだ本当に見守る必要があった。
そのあとの言葉が出てこない。
いがめないコミュニケーション不足が、こんなところに祟るとは思いもよらなかったわけだが。
他人との隔てか壁を鬱陶しくおもったことはこれほどない。
電動ハイブリット自転車ということで、ボディーには軽量部分と、車に使われるカーボンフレーム採用の自転車だが、逐一エネルギーを作り出すとか省エネとはいっていたけど……循環機能を生かすためには普段よりも数倍の力が必要になるため、常時電動駆動。
完全省エネにはまだ時間がかかるようだ。
まあ、電動のお陰でユーリを乗せて体勢維持は楽だけど。
出せる気力を振り絞って、すこしばかり彼女の顔色を変わる。
それは、驚きの色。
「すごい」
彼女の上声と共に、直進するスピートが加速した。
それは無邪気な声にも近い。
視界が変化することに、慣れ親しんだのか。
「ハルさん、あれは?」
だけど、寄る辺もないものが心の一部がユーリの指さす車に警告していた。
車道で走る車なのに、まるで猛スピードで走り去り。
ただならない空気を感じた時には既に遅く、その車は目の前の進行を妨げるように歩道から車道へとドリフト走行で遮断した。
停止して、中から黒服の人が出てくる。
これは、紛れもなく憂慮すべき事態なのだ。
脅威を感じた俺は、ただちに自転車を止めて脇道へと入る。
狙いは……疑いもなかった。
押し出すペダルには、微塵も安心などという粉飾したものがない。
心臓が急激な鼓動にギリギリまで踏ん張る。
キツイなどと言葉にすれば、それは
「ハルさん」
ユーリには恐怖に脅えた顔。
わかっているよ。
「ユーリ、絶対大丈夫だから」
ただ、安心させることばかりもできなくて心配ないとこの時ばかり出まかせを彼女に優しく言葉にしてみたが、俺自身臨機応変できていない。
「くっっ!!!」
ゴミ箱を蹴り飛ばし、細い路地へと入り更に奥へと進む。
先ほどの車はここまで追いついてかれない。
安心しきるわけではないけど、進路には障害物多数。
早く、はやく。
一刻おも猶予なんてあるはずがない。体を曲げ、体勢をくの字に曲げカーブを越える。
だが、物音ひとつない進路明かりはLEDライトだけ。
そこには、ビルの街灯と車のヘッドライトだ。
突き進んだ路地には、コンクリートで擦る、足には火花が散った。
このままでは、追いつかれてしまう。
だから、
「ハルさん、私を降ろしてください。そしたら、ハルさんだけでも助かります」
あんなに一緒だったのに、たった一瞬のできごとにこんなにも無残な別れなんてしたくない。
隣にいた。
それは、紛れもない真実なのだ。
「バカっ!! お前を守るために逃げているのだから、絶対降ろすわけにはいかない。俺が許さない……俺は、俺を助けてくれるんだろうっ!!」
例え、自分の体が傷ついたっていい。
こんなちっぽけで小さな存在すら助けられない自分が無罪されるわけもない。
初めてだった、自分が誰かと一緒に過ごす時間がこんなににも楽しいものだと。
この子が、気がつかせてくれた。
ならば、それ相当の代価は支払うべきだ。
公道にでて、通行人を跳ね退くように即座に旋回しつつ猛スピードでこぐ。
当然ながらも追ってくる黒い車。
速度なら圧倒的に負けているし。自転車での時速と風向きが追い風でなかった場合は車に対面することになる。
だから、車道に飛び出し危険を承知で対向車スレスレまで自転車の余力で回避。
罵声のごとくクラクションが鳴り響く。
追ってくるようにみるみるスピードを上げる黒い車。
ユーリは蒼白になって後ろを見ていた。
「今だっ!!! ユーリ右に体を斜めにしろっ!!!」
最後の一台、正面手前にして変換した方向がギリギリまで車のダンパーから右へと体を倒して滑り堕ちる。
擦れた体、足を前身の筋肉を使い転倒しまいと踏ん張って奥の壁にゴツンと激突していた。
ユーリの無事を確認した時には黒い車が対向車と激突して事故を引き起こして立ち往生しているうちに自転車を再び急進させるのだった。
事態が展開が急に早くなっています。
というか、ハル大丈夫だろうか。
それにどうして追われるのだろうか?
というか、重要機密ならばダンボールで送りつけてくるなよと身勝手にツッコミしてみたいですね。